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人事・組織領域を専門とする、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティング担当です。人事・組織・マネジメント関連情報をお伝えします。人事やマネジメントの方々にとって、未来の組織を作り出す一助になれば大変うれしいです。

なぜ現場と人事は仲良くできないのか

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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。

Harvard Business ReviewのHBR Blog Networkに、現場と人事との関係性に関するエントリーがありましたのでご紹介します。著者はコンサルタントのRon Ashkenas氏。

Why Managers and HR Don't Get Along
http://blogs.hbr.org/2014/07/why-managers-and-hr-dont-get-along/



アンビバレントな関係

アンビバレント(ambivalent)とは相反する2つの感情を同時に持ち合せていることを意味しますが、現場のマネージャーが人事に対して抱いている感情がまさにこれとのこと。

Managers often rely on their HR partners to help them build an effective team, but then chafe at them for forcing them to "follow the process."

マネージャーはよく部門の人事に対して生産性高いチームを作るのを手伝ってくれるよう頼りにするのに、一方で「ちゃんと手順を守ってください」と強要する人事に対してイライラするのだ。

まとめると、

many line managers are disappointed in their HR people

多くの現場のマネージャーは人事の人々に対して失望している。

ということになるのですが、確かに現場から見る人事と、人事が自分で自任している人事の姿やその意義に、大きな乖離があるのは、両方の立場を経験した私から見ても、明らかなところです。失望が行き着くところは諦め、何も期待しないという態度ですから、これはなんとかしなければなりません。

Ashkenas氏曰く、この複雑な関係性に影響を与えている要因が、大きく3つあるとのこと。



(1)人事の役割がコロコロ変わる

First is the confusion about the role that HR is playing at any one time.

まず最初にあるのが、人事がその時その時に果たしている役割についての混乱である。

ここで引用されているのはもはや20年以上前の刊行で今や古典となったDave Ulrich氏の人事の4機能ですが、

  • administrative expert(人事管理の専門家)
  • employee advocate(従業員の擁護者)
  • strategic business partner(戦略的なビジネスのパートナー)
  • change agent(変革の推進者)

人事の中でも専門特化した仕事をしているスペシャリストを除けば、

Many other HR professionals however, particularly generalists, switch back and forth between the roles, and when they (and their management partners) are not explicit about which role is being played, it creates misunderstandings.

しかし他の多くの人事のプロたち、特に広く業務を行っている人たち(ゼネラリスト)はいろいろな役割を行ったり来たりさせており、また彼ら(や彼らの上司)が今どの役割に従事しているのかを明らかにしない場合に、この誤解が生まれてしまうのだ。

ということで実例が紹介されています。ちょっと長いですけども引用すると、

an HR person who was helping a team streamline a number of key planning activities switched the discussion from process mapping to employee performance assessment. The managers were puzzled and frustrated by the shift, because they felt that they were making progress and that HR was all of a sudden slowing them down. But the HR person was simply concerned about whether the team's actions would eliminate some positions and wanted to make sure it was handled in a fair and equitable way.

ある人事担当者がチームの主要な計画立案の効率化を支援しており、その際にプロセスマッピング〔プロセスをビジュアル化して流れを見える化する手法〕の話題から、従業員の評価の話に急に議論を転換した。これを聞いたマネージャーは混乱に陥り、この話の展開に怒りを感じた。なぜなら彼らは議論を早く先に進めたかったにも関わらず、人事が突然その流れを断ち切ってそのスピードを落としたからだ。しかし人事担当者は単純にこのチームの計画がいくつかの役職を無くすことになることに懸念を感じ、この動きが公平かつ公正な方法で運営されているかを確かめたかっただけなのだ。

つまり、この時人事担当者はchange agent(変革の推進者)からemployee advocate(従業員の擁護者)へと役割を変更したのだが、それを明示しなかったために現場の人々の怒りを買ったわけです。ともすると人事はadministrative expert(人事管理の専門家)の役割しか果たしていない、と言われることも多いのですが、いろいろな役割をこなせる人事担当者であればあるほど、こうした誤解を生んでしまう可能性は高いかもしれません。



(2)仕事を押し付け合う

Second, many managers don't fully accept their own accountability for managing human capital, and instead want HR people to "take care of it" for them.

第二に、多くのマネージャーは人材のマネジメントに関する自分の責任範囲について完全に納得した上で受け入れてはおらず、その代わりに人事の人々に対して、自分たちの代わりに「面倒を見る」ことを求めている。

その結果起きるのが、

They avoid or delay activities such as candidate interviews, performance assessments, employee feedback discussions, compensation reviews, responses to engagement surveys, and a host of others.

彼らは面接や人事評価、従業員へのフィードバック、給与査定、意識調査への回答や他の人の面倒を見ることなどについて、それらを避けるか、手を付けるのを遅らせたりするのだ。

これもよく散見される事態ではないでしょうか。その結果、

it leaves HR people acting like the process police and chasing after recalcitrant line managers

結局人事担当者が手順の見張り番となって不機嫌極まりない現場のマネージャーを追いかけ回す羽目になる

ということになってしまい、お互いの関係性がよくなるはずもありません。



(3)人事が現場をわかっていない

これもよく聞きますね。

Finally, all too many HR people don't take the time to truly understand their company's business and the pressures facing its managers.

最後に、あまりに多くの人事担当者が会社のビジネスとそれによってマネージャーが直面しているプレッシャーについてきちんと理解するための時間を取っていない。

具体的には

It's surprising how many HR people can't explain their firm's business model, competitive industry context, or critical product issues ? much less be conversant with the key financial metrics.

会社のビジネスモデルや競争の激しい業界構造の文脈、製品に関する重大な問題について説明が出来ない人事担当者の多さは驚くほどであり、ましてや主要な財務指標について精通している人はほとんどいない。

その後、これを解決する方策の一つが人事と現場とのローテーションだが、導入している会社はほとんどない、との指摘が続きます。そしてこの結果が何をももたらすかと言えば、

most HR people become functional or technical experts and miss out on the nuances (or basics) of the business. In the absence of this understanding, it's often difficult for HR people to contextualize the critical human capital processes for managers, who then don't know how to prioritize them.

多くの人事担当者は人事の機能と手法に関する専門家となり、ビジネスに関するニュアンス(や基礎知識)を習得するチャンスを逃すことになる。この理解が無いために、人事担当者は人材に関して必要不可欠なプロセスをマネージャーに抽象化して伝えることが難しくなってしまい、マネージャーも優先順位の付け方がわからなくなってしまうことが多いのだ。



歩み寄ろう

幸いなことに、このアンビバレントな関係は修復可能です。双方の努力は必要だけれども。

Line managers have to accept that human capital management is a major part of their job that can't be delegated or deferred; and HR professionals have to better understand the business and appreciate the performance challenges facing line managers.

現場のマネージャーは人材マネジメントが自身の仕事の重要な一部分であることを認め、それを移譲したり委譲したりすることが出来ないことを認識すべきだ。そして人事のプロを自任するのであればビジネスをよく理解し現場のマネージャーが直面する高い成果への挑戦を称賛しなければならない。

そして、人事担当者は、今どの役割で話をしてるよ、ってことを付け加えるといいかも、とのことでした。

お読みいただきありがとうございました。

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