オルタナティブ・ブログ > 未来の人事を見てみよう >

人事・組織領域を専門とする、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティング担当です。人事・組織・マネジメント関連情報をお伝えします。人事やマネジメントの方々にとって、未来の組織を作り出す一助になれば大変うれしいです。

マネー・ボール化が進む職場

»
クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
ビッグデータが喧しいですが、この流れは日本の人事界においても徐々に無視出来ないものになっています。
そのような中、ど真ん中の記事がBUSINESS INSIDERに掲載されていたので、ご紹介します。

MONEYBALL AT WORK: They've Discovered What Really Makes A Great Employee


ビッグデータ化で何が変わるか?


今どのような動きを企業が行っているかというと、

Companies are scouring the Internet for data about potential employee's professional lives, applying the big data technology to years of employee surveys and tests, and even picking up new data from specially designed games.

企業は、ポテンシャルのある社員の職業人生のデータをインターネットをつぶさに見て探したり、ビッグデータのテクノロジーを用いて長年にわたる社員意識調査や各種試験を見ていったり、特殊な目的のためにデザインされたゲームを使って新たなデータを獲得したりしている。

ということのよう。最後のものは、いわゆるゲーミフィケーションの分野ですね。
そして、その結果どのような結果が到来するか、というと、

まずは、履歴書が死滅する、と。

Since most people, especially the most in-demand, aren't actively searching, a big hunk of the recruiting process happens before the resume enters the equation.

多くの人々、とりわけ最も求められている人々、は積極的に仕事を探したりはしていないため、実際の採用プロセスは、履歴書が検討される前から始まっていることが多い。

リンクトイン(LinkedIn)の売上の57%はこういった活性化していない人材データの提供であり、毎年80%の伸びを記録しているんだとか。


そして次に、大学の学歴の価値が落ちる

このブログでもつい最近

Googleが学歴重視の方針を転換

関連する論考を取り上げましたので、詳細はこちらをどうぞ。
今回の記事に載っている保険会社の例では、毎年有力なMBAの卒業生ばかりを採用していても、パフォーマンスと大学名や大学時の成績には何ら関係が無かったのだそう。


そして、面接が別のものに置き換えられるようになります。

ある識者は、

"The ability to attract insights ? and predictive insights ? and make an intelligent decision based on that info is very poor,"... "People fake it, they put on a show, we all know that interviews are not predictive."

「洞察を掴み取り、そしてそれを予測し、それらの面接の情報から知性あふれる決断を下す能力は、著しく低い。」...
「人々は嘘をつくし、芝居を打つ。誰だって、面接が予測可能では無い、なんて思っちゃいない。」

と話しています。そして、実際、面接を行う側のスキルも著しく低い、と。


このようなことが起きる背景には、入手出来るデータの質が高まったことがあるようです。

先のゲーミフィケーションを通してスキルを測定していくサービスにおいては、

"Cognitive ability is a small fraction of what we measure," Halfteck says. "We measure everything from creative abilities to emotional and social intelligence, to how you think and make decisions ... how you interact with emotions, understand emotions, how you learn new information, how curious you are about the world."

Halfteck氏は、「認知的な能力は、我々が測定するもののほんの一部に過ぎない」と語る。「我々は創造的な能力からEQやSQ(社会的な知能指数)をはじめとして、どのような考え方をしてどのように意思決定をするか、どのように感情と折り合いをつけ、感情を理解するか、どのように新しい情報を学ぶか、どれくらい身の回りの世界に興味を持っているか、といったこと全てを測定する。

これが、15分ほどのゲームをしてもらうだけでわかるのだそうです。


今企業が人材に求めるもの


これらの傾向を見つつ、今企業が人材に求めるものとして、7つの要素があげられています。


Adaptability / 適応能力

言いかえると、"learning agility"(早く学ぶ力)。そして自主性があること。

People who follow instructions are mostly substitutable. Those who can be thrown into a new situation and thrive are truly valuable.

指示に従う人々は、最も取り換えが利く人々だ。新しい状況に放り込まれてもそこで何とかやっていける人こそが本当に価値がある。

Resilience / 回復力・耐久力がある

以前の以下の記事をお読みいただくと良いと思います。

心理学者が考える、未来のリーダーに必須の5つのスキル

ある企業では、セールスパーソンとして大成するのはoutgoing(社交的)な人ではなく、emotional courage(精神的な勇敢さ)のある人だったそうです。


Social and emotional intelligence / SQとEQ

心の知能指数と、生き方の知能指数、ですね。

everything we do, and try to achieve inside organizations, requires interactions with others

我々が行う全てのことにおいて、社内で何かをやってみて達成しようと思えば、他人ときちんとやり取りをする力が必要になる。

どんなにクリエイティブな考えがあっても、それが人に伝わらなければ、意味が無い、と。


A diverse background / 多様な経歴

ここではある石油会社の例が取り上げられています。

石油の生産ラインのスタッフを雇おうとしたとき、石油工学の人をまず第一義に考えたが、実績データを詳しく見てみると、高い成果を上げていたのはその分類の人ではなかったとのこと。

the people who were surviving in these jobs ? and these are jobs where the turnover rate was very very high ? were mostly people who had come from families that had multicultural parents, parents that had international experience

これらの仕事で生き残ってきた人たち―この仕事はとてつもなく離職率が高い―は多文化の背景を持つ両親の家庭の出身者であり、両親が国をまたがる経験をしていることが多かった。

一方で大学なんて全く関係なかったのだとか。また、

Another interesting find? The most successful people had played sports in college too.

他にも面白い結果は無かったかって? 最もうまくいっている人たちは大学時代にスポーツをしていたよ。

ビバ、体育会系! 石油会社を狙うべし!


Friendliness / 親密さ

ある劇場での顧客満足度を上げようとした場合に、

Naturally, they tried to boost that in all of their stores by training everybody in better service, but six to nine months of training didn't produce results. It wasn't the training, it was the people

自然な成り行きとして、彼らは満足度を高めようとその店舗にいる全てのスタッフによりよいサービスを行うための研修を提供したが、6~9ヶ月の研修は何ら効果をもたらさなかった。問題は研修じゃなく、人だったのだ。

ということがあったのだそうです。ここも元々は学歴や成績などを重視していたのですが、その後パーソナリティをベースとした採用に換えたところ、投資対効果が大きく高まったのだとか。


Raw processing power / 純粋な職務遂行能力

across the entire set of jobs that people can engage in, it's general intelligence that's your processing power and conscientiousness. That you do the right thing and care and plan ahead ? those things ? and to do the right thing

人々が行うあらゆる職務において、単純な職務遂行の能力と誠実さとは、しごく当然持ち合わせるべき知能と言える。それは正しいことを行うことであり、ケアすることであり、それらについて事前に計画を立てることであり、そして繰り返し正しいことを行うことである。

A professional presence / プロしてのプレゼンス

今や、

They're using recruiting products to proactively search professional sites, like LinkedIn, to find the best and brightest.

企業は採用ツールを使って主体的にLinkedInなどのプロフェッショナルな人材が集まるサイトで検索を行い、優秀な人材を見つけようとしている。

そうであり、働く側も、それに応えるような個人ブランドを確立する必要がある、とのこと。


日本の人事にビッグデータ時代は来るのか?


ただここまでは主に米国の事例であり、日本の人事にもビッグデータを活用する時代は来るのか?というところですが、

以前取り上げた以下の記事では、

人事に関する辛辣かつ真っ当なアドバイス2012年版

Big data is what small-minded people want when they don't know how to ask for something more specific.

ビッグデータなんてものは、小心者がさらに詳しい情報を頼むツテを知らない場合に欲しがるものに過ぎない。

HR technology can't solve for stupid.

人事系テクノロジーをもってしてもおバカさんをどうこうすることは出来ない。

というコメントもありました。ので、下手に使うとあまり意味を為さない可能性はあります。

しかし、採用面だけでなく、社内の隠れた人材を探し出していく上で、データ分析は有効なツールの1つになりうるのではないでしょうか。

例えば先週のやまもといちろう氏の有料メルマガにおいても、


将来的にはビッグデータというか解析手法自体はいままでのようなマーケティングオリエンテッドというよりは、人事や物流の方向で活用されていくと思います。リソースマネジメントに統計的手法が使われるようになることで、多くの隠されたリソース、評価されてこなかった強みというものが見えてくるんじゃないでしょうか。

というように、まさに隠れた人材を社内で探していく試みに、大いにデータは活用できるのではないでしょうか。

サイバーエージェントでは、社内に人材エージェント部門を創設しています。


この動きの裏側で、どのようにデータを活用しているのか、いつか話をお聞きしたいところです。
ご一読感謝!


昇格や降格などの人材マネジメントにおいては、客観的な社内人材データを元にした判断を行い、精度と納得性を向上させていくことが重要です。是非人材アセスメントをご検討ください。



株式会社ビジネスパブリッシング発行の『人事マネジメント』誌にて、当社コンサルタントが「ブランド価値を高める人事」と題して連載記事を執筆しています。現在第3回目が最新号に掲載されていますが、バックナンバーについてはこのブログでも転載しています。是非ご照覧ください。



「ブランド価値を高める人事」




Comment(0)