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人事・組織領域を専門とする、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティング担当です。人事・組織・マネジメント関連情報をお伝えします。人事やマネジメントの方々にとって、未来の組織を作り出す一助になれば大変うれしいです。

米Yahoo!の在宅勤務禁止令への好意的な見方

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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
当社のTwitter(@creiajp)でも2/25に呟きましたが、


米国Yahoo!のCEO、マリッサ・メイヤー氏が、

何百人ものYahoo!在宅勤務者に対し厳しい最後通告を送り付けた。くだんの通告は一言で言えば「これからは会社に出社して働くか、さもなくば会社を辞めろ」というものだった。

というニュースが世界中を駆け巡りました。上記出典は、気づいた範囲では日本のメディアで最も早くこの情報を日本語で伝えた@IRORIO_JPさんのもの。


昨日にはCNNの記事が日本のYahoo!トピックスにも紹介され、日本でも情報が拡散されています。

米ヤフーの「在宅勤務禁止」 ネットで賛否両論

否定する意見のほうが多い印象を受けますが、肯定的な意見もあちこちで見られます。当社で主にチェックしている米国メディアにおける、肯定的な反応をいくつかピックアップしましょう。

否定派はビジネスの文脈ではなく個人的な意見で批判する傾向に


人事専門サイトのTLNTにおいて、Paul Rupert氏は

The Flexible Work Debate: New Way of Working vs. Old Way of Thinking

Its supply o(f) denial seems increasingly based on personal need rather than business imperative...

To survive, to thrive, to grow, flexible work needs to enable collaboration and to deliver concrete business gains along with employee satisfaction. Perhaps Yahoo's approach delivered these things and the new sheriff either swept them aside or ranked other values more highly. More likely, flexibility was seen as a "perk" and not an essential business driver.

否定的な意見は、その数を増すごとに、ビジネス上の責務というよりも個人的な必要性からなされているように見受けられる。...

生き残り、繁栄し、成長するためには、社員の満足感を保ちつつも、在宅勤務を通して協力関係を作り上げ確固たるビジネス上の収益を導かなければならない。おそらくYahooのやり方は、このことを実現する過程において、新しい保安官〔メイヤー氏〕は在宅勤務を脇に置いておくか、他の価値観をより高く評価したに過ぎない。よりあり得る話としては、フレキシブルな勤務が「福利厚生」として見られ、ビジネスをうごかす不可欠な原動力としては捉えられていなかったのだろう。

と述べています。確かにGoogleをはじめとする各社は福利厚生のレベルを高めることによって、より優秀な人材を採用しようと必死です。その中で当然のように保障されていた在宅勤務は、今や福利厚生の1コンテンツとしての位置づけしかなく、競争力の向上には至っていなかった可能性は否定できません。


劇薬が必要なほどの米Yahoo!の現状


このブログでもしばしば取り上げるLaurie Ruettimann氏は、以下の2つのエントリにおいて

Walking Back Work From Home: Yahoo and Virgin

Marissa Mayer Backlash is Stupid and Sexist

I think it makes sense.

  • Yahoo is a fractured business. They are so schizophrenic that they really don't know who works for them and where. (Despite the best payroll systems, this is very common.)
  • In order to understand labor costs, they are calling upon employees to be present and accountable.
  • Through this effort, Yahoo will consolidate internal politics and define institutional power.
  • Once Yahoo understands its labor force, they will be in a better place to either merge with another organization or be purchased.


私はこの件は筋が通っていると考える。なぜなら...

  • Yahooは今やビジネスがバラバラだから。Yahooは統合失調の状態にあり、誰がどこで彼らのために働いているのか本当に理解出来ていないのだ。(給与システムは最高のものを使っているにも関わらず、だ。しかしこれはよくあるケースである)
  • 労働コストを正しく判定するために、社員に出社して説明責任を果たすよう求めている。
  • この動きを進める中で、Yahooは社内の政治状況を整理整頓し、組織としての力を確立しようとしている。
  • Yahooがいったん社員の力を理解すれば、彼らは他の組織と統合するか、うまく売却されるかして、よりよい位置づけを確保するだろう。

つまり、

Work happens where it needs to happen. In offices. In factories. In homes...

You know where work isn't happening? In the homes of Yahoo employees.

仕事は起こるべき場所にて発生する。それはオフィスであったり、工場であったり、自宅であったり。。。

その中で、仕事が発生していない場所を知っているだろうか? Yahooの社員の家がそんな場所なのだ。

そして、リチャード・ブロンソンが行った、在宅勤務を擁護する発言に対しては、

Richard Branson? Do you always take advice on work-life balance from a guy with billions of dollars and a staff?

リチャード・ブロンソン? 何百億もの資産と人員を抱える男からワーク・ライフバランスについてのアドバイスを受け入れる人なんているのだろうか?

と述べています。

また、さらに重要な点として、

you can't work from anywhere if your company doesn't have a strategy to make money.

もし会社がお金を生み出す戦略を持っていなければ、どんな場所であっても働くことなどできない。

故に、さらに今後のYahooの戦略的展開を注視していく必要がある、と。


的確な経営としての判断


TLNTでのChina Gorman氏も、

Sometimes, a Policy Change Is Just a Policy Change ? Even at Yahoo

And I understand the concern, ...
Their data is solid. I get it.

Except when it isn't working.

懸念事項は理解できる。...
〔在宅勤務が好ましいとする〕彼らのデータも確かなものだ。まったくもって賛成する。

ただし、それらが成り立つのは、ビジネスが成り立っていない時を除いて、だ。

として、Yahooのビジネス自体が在宅勤務を通した価値向上を望める状態になりことを示唆しています。

その他にも、WirdやHarvard Business Review、Fast Company等において、この決断を支持する記事が上がっています。

Marissa Mayer's No-Working-From-Home Rule Is Stupid ? Or It Could Save Yahoo

Marissa Mayer Is No Fool

Yahoo Issues Statement Over Home-Working Ban: It's Right For Us


重要なことは争点を明確にして人事が努力を行っていくこと


アメリカの人事系の実務家、Kris Dunn氏は、今回の在宅勤務の争点は、以下の2つに絞られる、と言います。

THE GREAT REMOTE WORKER DEBATE: The Only Two Things That Matter...

1. You should be trying to find ways to make your location specific, "in the office" workers more productive.

1. 勤務場所が特定されている、「会社にいる」社員がより生産的になる方法を見つけ出す必要がある。

2. You should be trying to make your remote workers more available in all ways to be part of teams, to collaborate and set the expectation that's a part of the role.

2. 在宅勤務者がチームの一員として、協力関係を築くと同時にチームの期待役割をきちんと共有した上で、常に接触可能な状態になるよう努力していく必要がある。

人間がいわゆる性善説でもなく性悪説でもない、俗に言う性弱説に縛られているとするならば、育児や介護等の必要によって在宅勤務を余儀なくされる意欲あふれる人材は別として、在宅のほうが効果を出せるという社員をいかにリモート状態でマネジメントしていくかは、これからのチームマネジメントを行っていく中で、重要な課題になってきそうです。

HRE Online The Leader Boardによると、

Telework's Future (Non-Yahoo! Edition)

58 percent of businesses surveyed "plan to double their budgets for online workers" in 2013 versus 2012.

2012年と比べて、調査に参加した企業の58%が「在宅勤務者に対する予算を倍増させることを計画している」としている

とのことですが、同時にMIT Media Labのvisiting scientistであるBen Waber氏の以下のコメントも同時に掲載をしています。

Remote work, however, means that you lack a social connection to your colleagues. In general, this relates to lower job satisfaction for the entire company, higher turnover, and lower productivity."

在宅勤務は〔一過性の在宅勤務と比べると〕仲間との社会的な接触を減退させることになる。このことは一般的には全社に対する職務満足の低下や高い離職率、低い生産性につながっていく。

内容はともかく、やり方が稚拙だったよね。。


最後に反対派の意見を1つ。アメリカのソフトウェア開発会社、37signalsのDavid Heinemeier Hanssonのブログをご紹介。主義主張としても在宅勤務の一律廃止に否定的なのですが、最大のポイントはそこではなく、

No more remote work at Yahoo

Hell, imagine you're any kind of worker at Yahoo and you read that. Are you going to be filled with go-getter spirit and leap to the opportunity to make Yahoo more than just "your day-to-day job"? Of course not...

最悪な事態だが、自分がYahooで何らかの形で働いているとして、この〔在宅勤務禁止を告げる〕メールを読んだと想像してくれ。なんとかしなきゃという想いにとらわれ、Yahooをただの「日銭仕事」以上のものとして作り上げていく機会に飛びつくだろうか? もちろんそんなことはあり得ない...

人事をはじめとした組織の施策を大きく動かしていくにあたっては、設計も重要ではあるものの、本当に重要なのは、こういった導入・展開・運用時の細かな手配や気配りを丁寧にデザインし実行していくことです。ここが抜けていた点においても、今のYahooが健全に機能していない(そもそも情報がリークされる時点で厳しいのですが)ことが垣間見えます。

日本ではまだ在宅勤務がアメリカほどは一般化していませんが、この動きは注視していく必要がありそうですね。
まとめサイトみたいになってしまいました。お読みいただき感謝。


PS: メイヤー氏は自腹で保育士を会社で雇っています

Marissa Mayer, Who Just Banned Working From Home, Paid To Have A Nursery Built At Her Office

Mayer ? who had a baby last fall ? is a working mother, but she's able to bring her kid to work.
That's because when Mayer had her son last fall, she paid to have a nursery built in her office.
Not all Yahoo haves that kind of money or clout.

昨年秋に出産したメイヤー氏はワーキングマザーだが、彼女は仕事に息子を連れてくることが出来ている。
出産後、彼女のオフィスに保育園を創るべく、実際にお金を出したのだ。
とはいえ、全てのYahooの社員がそういった種類のお金や影響力を持っているわけではない。

まだまだ論争は続きそうです。。


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当社は各組織の実態にマッチした、オリジナルな人事・組織の施策設計を行うのと同時に、施策の導入・運用・定着に至るまで、責任を持ってサポートしています。実効性の高い人事・組織領域の諸施策をご検討の方は、是非お気軽にお問い合わせください。




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