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サイボウズはOffice9のカスタムアプリでBtoBソフトウェアのロングテールを狙う

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このブログでも何度か取り上げているサイボウズさんが、中小規模向けのグループウェアの最新版、サイボウズ Office9を10月3日に発売しました。

このOffice9の最新機能「カスタムアプリ」に、僕はちょっと衝撃を受けました。僕が「BtoBソフトウェアのロングテール」と勝手に命名している市場に対し、サイボウズさんが本気だという事を感じたからです。

Long tail
Long tail / Lars Plougmann

昔から似たような機能として「デヂエ」がありましたが、今回の「カスタムアプリ」は、デヂエを更に機能拡張させて、タスク管理等の機能を強化したようなもので、「BtoBソフトウェアのロングテール」市場を攻略するための重要なポイントを押さえてきています。そして、この「カスタムアプリ」が、同社が最初に販売し、現在も同社のメイン製品であり続けているサイボウズOfficeに標準搭載*されている事実。ここに、僕はサイボウズさんの本気度を感じるのです。

BtoBソフトウェアのロングテール

この「BtoBソフトウェアのロングテール」市場とは、いわゆる「ロングテール理論」をBtoBソフトウェア市場に当てはめてみたもので、1番販売数の多いヘッドの部分に会計システムや人事給与システムがあり、その後にグループウェアや販売管理システムが続き、以降、販売数は小さくなりながらも無限にテールとなる業務が続いていく。というものです。

BtoB_Longtail.jpg
この長大な「テール」となる部分は、今までは受託開発で専用アプリを開発したり、Excel,Access等を駆使する事で処理されてきましたが、Webアプリの長所を活かし、かつエンドユーザーが簡単にデータベース設計ができる製品があれば、この無限のテールの部分を幅広くカバーできる可能性があります。

それがウチの会社で開発し、進化させ続けているワークフロー製品であり、デヂエやフォース・ドットコムの狙ってきた市場だと思うのです。

1番力のあるプロダクトで新しい概念を提案する

「デヂエ」はこの市場で一定の成功を収めた製品ですが、それでも、メインとなるグループウェアの売上と比較すると、恐らく、まだまだ小さな規模の売上だった事でしょう。

しかし、グループウェア市場が成熟する中、新たな成長市場の開拓は必須です。デヂエの狙う市場は、その次なる成長市場たりうるもの。方向性は間違っていないとしたら、どうすればこの市場の売上を増やせるのか。これまでのようにおのずとデヂエの価値をわかってくれるお客さんに売っているだけでは大きく規模は広がらないのでは?

今回のカスタムアプリは、それに対する答えのように感じられます。サイボウズOfficeにカスタムアプリを搭載するということは、ユーザーに対する啓蒙です。「ソフトウェアにはこのような可能性があるんだよ」という事を、最もユーザー数が多く、最も信頼されているプロダクトを使って伝えていこう、という事のように感じられます。

それは、任天堂が長く同じ形だったゲームのコントローラーの変革にチャレンジする時に、最初からWiiを発売するのではなく、最も力のあるプロダクトだった持ち運び機(ゲームボーイ→ニンテンドーDSによるタッチパネルインターフェイスへの変革)から始めた事を思い出させます。

まあ、この市場を狙っているのはウチの会社もなので、あまり手放しに喜んでいる訳にもいきませんが、サイボウズさんのような大きな会社が、明確なビジョンを持ってチャレンジしているのを見るのは勉強になるというか、やはり楽しいものですし、このような製品の価値を理解してくれる人が増えれば、ウチの製品を理解してくれる人も増えるでしょうから、別に良いのです。

ここまで書いてきてなんですが、あくまでこれは僕の勝手な考えなので、実際のところサイボウズさんがどのように考えて「カスタムアプリ」を提供されたのかは分かりません。ただ、久しぶりにブログのタイトル通り、「面白いBtoB」と思ったものについて書く事ができて満足であることは、確かだったりします。

* 実際にはカスタムアプリは「プレミアムコース」のみの機能です。


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