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華々しく発売された新製品が、それほど売れないのはなぜ?

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新製品が売れない。新製品がすぐに陳腐化すると言われています。実際に価格コムなどを見ていると新製品が瞬くまに価格が下落していくのが手に取るように解ります。現代では新製品に飛びつかないで、製品末期に十分値下がりしてから購入するのが「賢い消費者」になりつつあります。実際、新製品も旧製品も大して製品の差はありません。

多くの企業にとって、新製品を開発して発売する事は極めて困難な作業です。しかし、米国の事例を見ると、この10年間の間に企業の平均的な新製品開発期間は、42ヶ月から24ヶ月に短縮されています。つまり42%も市場投入への期間が短縮されているのです。しかしもちろんこの10年で生産性が大幅に高まった訳ではありません。逆にこの10年で売上高における新製品の比率は32.6%から28.0%に減少しています。

つまりは、新製品が粗製乱造され、個々の売り上げが減少している事が判ります。新製品が売れないのではなくて、「売れないような新製品ばかりを企業が出荷している」のが事実だと言えます。

これは多くの経営者が、「早く成果が生まれ」「リスクの低い」「簡単な」プロジェクトに集中する事を選んだ結果です。真にイノベーティブな製品を開発するのではなく、既存製品の拡張、改良、マイナーチェンジにフォーカスして小手先の新製品で売り上げを伸ばそうとしてきた結果と言えます。

真にイノベーティブな新製品は圧倒的な売り上げと収益性を実現します。iPodiPhoneは間違いなくイノベーションでした。比べてMicrosoftのタブレット製品は既存製品のマイナーチェンジであり、まさに「早く成果が生まれ」「リスクの低い」「簡単な」プロジェクト製品と言えます。このような製品は、どれほど宣伝コストを積み上げても消費者の心を掴めません。このような投資を続けていては企業はいずれ衰退を迎えてしまいます。

多くの企業は、あまりにも多くの既存製品を抱え、膨大な新製品開発のリストがあり、それらの全ての開発プロジェクトに対して効果的に、タイムリーに投資を行う事は不可能です。その結果として短期的な収益に対して投資を集中してしまいがちになります。企業は株主や市場から短期的な成果を求められているため、これはある意味仕方がありません。まったく新しい製品を市場に投入する事は極めてリスク高い作業であり、適切に評価を行う事は簡単ではありません。それこそカリスマ的な経営者がいない場合には。。

多くの場合、良質なプロジェクトほど開発は送れ、プロジェクト化自体が見送られていきます。

それでは、どのように企業は「仕組みとして」、市場を一変させるような新製品の開発に対して、正しく長期的な投資を行う事が出来るのでしょうか。

現在、多くの企業では、投資資源が、平凡で価値の低いプロジェクトに浪費されています。外見やパッケージを僅かに変更しただけの新製品を、大々的に膨大な広告予算を使い宣伝しています。しかし結局大した売り上げには繋がりません。価値のある良質なプロジェクトに対して経営資源が投入する方が、長期的には大きな利益を得る事が出来ます。企業は不適格なプロジェクトを中止し、最良のプロジェクトへ経営資源を集中しなければなりません。

これらの意思決定を支える「仕組み」がステージゲート法です。

ステージゲート法とは、新製品をアイディアから市場投入、販売までを展開するためにモデルであり、その活動を効果的に管理する開発・投資管理プロセスです。様々なアイディアを、最初から少数に絞り込むのではなく、複数のステージを設定して、初期の段階ではまずはプロトタイプを通じて、多数のアイディアを試行し、次のステージに移行する前にゲートを設けて評価を行い、パスした案件のみ次のステージに進めていく事で、効率的に案件を絞り込み優良プロジェクトに投資を集中させる手法です。

重要な事はゲートでの案件評価は、決して技術面や投資の少なさや短期の売り上げだけではなく、長期的な市場性や、競合との比較、長期的な投資、マーケティング費用など、様々な次元から案件をポートフォリオで分析することです。

全ての製品にはライフサイクルがありますので、現在の売り上げを支えている主力製品から、企業は徐々に投資を減らして行くことが必要です。しかし通常これらの製品主管部門は大きな発言力をもつため、企業は道を誤ってしまいイノベーションのジレンマに直面してしまいます。

ポートフォリオを用いて客観的に投資の有効性を各ゲートで審議を行うことにより、より声の小さな、しかし将来の企業を支える案件に対して適切な経営資源の配分を行う事が可能になります。

ステージゲート手法は新製品開発に留まらず、企業戦略やマーケティング戦略を策定する上で極めて有効な手法です。

ステージゲート法の国内に第一人者、浪江一公さんの翻訳した、「ステージゲート法 製造業のためのイノベーション・マネジメント 発売になりました。是非参考にしてみてください。

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