ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

自動運転システムのデータ・アーキテクチャーと新たな事業参入機会 〜官民ITS構想・ロードマップ2018から

»

政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は2018年6月15日、「官民ITS構想・ロードマップ2018」を公表した。

「官民ITS構想・ロードマップ2018」では、2020年までの高度な自動運転(レベル3以上)の実現に向け、これまでの方針を基本的に継承し、関連法制度整備の方針(大綱)や、自動運転実証実験の目的軸での分類・分析、自動運転に対する社会受容性確保に向けた取組などを反映し、取りまとめを行っている。

官民ITS構想・ロードマップ2018〈ロードマップ全体像〉は以下のとおりだ。

図1.png

出所:官民ITS構想・ロードマップ2018

自動運転システムは、今後10~20 年の間に急速に普及し、今後社会において大きなインパクトを与える可能性があり、政府も自動運転に係る公道実証の推進や制度整備を急いでいる。

自動運転システムは、交通事故の削減、交通渋滞の緩和、環境負荷の軽減など、従来の道路交通社会の抱える課題の解決につながると期待されている。また、自動運転システムは、ドライバーの運転負担の大幅な軽減や、これまでの社会的課題に対して新たな解決手段を提供する可能性がある点をあげている。

さらに、自動車関連産業は、周辺産業を含め産業規模が大きく、新たな自動運転技術を基にイノベーションを進めていくことで、移動・物流業界の効率化・革新を通じた広範な産業への影響や、自動運転技術の他分野(農業、鉱業等)への波及が期待されている。

出所:官民ITS構想・ロードマップ2018 自動運転システムによる社会的期待(例)

自動運転システム化の進展は、社会にインパクトを与えるだけでなく、自動車・移動サービスに係るビジネスモデルやその付加価値そのものが変わり、自動車・移動サービスを巡るこれまでの産業構造自体が大きく変化する可能性がある。

今後、自動運転システムの進化と共有型経済(シェアリングエコノミー)の進展により、自動車・移動に関する産業構造やビジネスモデル、付加価値そのものが変化し、個人や事業者など多様な主体による移動サービスが普及することを念頭に、民間企業によるビジネス展開が適切に進むために検討を行うことの必要性を示している。

自動運転の普及において鍵となるのが、自動運転システムに係るデータ・アーキテクチャーの大きな進化だ。

これまで、自動車の IT 化は、自動車の内部の機器・システムの IT 化に応じて、各種のセンサーが取り付けられ、それらのデータに基づいて、自動車内の各種制御が電子的に行われる組込み型のアーキテクチャーが中心だった。

今後は、各車両において収集されたプローブデータや、映像データを含む走行知識データなどが、ネットワークを通じて、クラウドのデータ・知識基盤に移転・蓄積され、それらのデータは、ダイナミックマップ、人工知能の基盤データに加え、各種ビッグデータ解析などのさまざまな分野に活用されるとし、以下のとおりイメージ図をまとめている。

図1.png

出所:官民ITS構想・ロードマップ2018 自動運転システムを巡るデータ・アーキテクチャー(イメージ)

自動運転システムは、今後、さらに交通データなどをデータ基盤(プラットフォーム)から得て駆動するようになり、そのデータを活用するためのコア技術は、従来の車両技術から、人工知能を含むソフトウェア技術とデータ基盤に移行していく。その基盤には、クラウドやエッジコンピューティングなどのインフラを利用して、さまざまなデータが流通することになる。

今後、公道実証などに利用されている自動運転システムは、市街地などのより複雑な環境での走行を実現していくため、シーン理解・予測、行動計画なども含めて、人工知能とルールベース制御の組み合わせが進んでいくとしている。

図1.png

出所:官民ITS構想・ロードマップ2018 将来の自動運転システムにおける人工知能(AI)の位置付け

自動運転システムの進化に伴い、プローブデータや自動車に設置された各種センサー・カメラなどにより収集された多量多種な交通関連データを用いてダイナミックマップの効率的な維持・管理が実現されていく方向性が検討されているという。これらのアーキテクチャーは、今後水平分業化に移行し、分野間を超えてデータが流通され、交通分野以外にも利用されることが期待されている。

図1.png

出所:官民ITS構想・ロードマップ2018 交通関連データ基盤の位置付け(イメージ)

官民協力によるデータの共有・流通を可能とするための標準・ルールなどの整備や、オープン化などのあり方について検討していくための体制整備も進められている。

政府が設置した「自動走行に係る官民協議会」では、「国の公道実証プロジェクトで収集・共有するデータの基本的考え方」を整理している。データフォーマットとして走行環境フォーマット・事業性フォーマット・困難な状況フォーマットを示し、可能な範囲で成果の公表を図ることができるようデータ収集・共有や分析・活用の際の仕組みを検討していくことの必要性を示している。

政府では、自動運転に係る事故データ、事故データ以外の安全関連データ(オーバーライドデータ、ヒヤリハットデータ、地域特有の留意事項など)、標準化などが必要な自動運転に係る技術的データ、実証地域における交通サービスニーズやビジネスモデルに係る情報などについての情報共有のあり方を検討していく予定だ。

これまでとりあげてきたように、今後10~20 年の自動運転システムに係るデータ・アーキテクチャーのあり方やデータを扱う制度設計は重要なテーマとなる。

制度設計では、高度自動運転システムの制度設計に係る基本スタンスで3つの原則をあげている。

・自動運転がもたらす巨大な社会的利益を認識し、その導入を推進する観点から制度整備を行う。

・安全の確保を前提とし、自動運転の導入に伴うリスクが更に低減していくような制度整備を行う。

・自動運転に係る多様なイノベーションを推進するような制度整備を行う。

自動運転がもたらす巨大な社会的利益や安全確保、イノベーションの推進など、さまざまな観点からの制度設計が必要となる。

また、今後のデータ・アーキテクチャー進展に伴い、自動運転システムを支える事業者にとっても新たに大きな事業参入機会が生まれる可能性がある。

たとえば、交通関連データを収集し最適化されたデータを提供する「データ・アグリゲータ」や「データブローカー」や、交通関連データをプラットフォームから提供する「データ・プラットフォーマー」、さらには、それらを支える人工知能やダイナミックマップ関連ソフトウェア事業者やインフラ事業者などにとっても大きなビジネス参入機会となる。

インフラ関連では、画像処理に優れたGPUを機械/深層学習などの汎用計算に応用する「GPGPU(General-purpose computing on GPU)」が広がっており、膨大なデータを処理するためには、GPUサーバーを利用できるクラウドサービスの利用も必要不可欠なるだろう。近距離などでのダイナミックマップ配信など、エッジコンピューティングのニーズも高まると考えられる。

2020年の提供が予定されている第5世代移動通信システム(以下、5G)も自動運転には欠かせないインフラだ。5Gは、最高伝送速度 10Gbps の「超高速・大容量」、「多数接続」、「超低遅延」といった特徴を持っており、特に、自動運転の場合は、5G による1ミリ秒程度の遅延の「超低遅延」の通信が必要だ。

自動運転普及のための自動運転システムのデータ・アーキテクチャーを構築し持続的に運用していくためには、膨大な先行投資と運用コストが必要となる。

自動運転のコストは、利用ユーザ、自動車メーカ、それらを支える事業者、そして、政府のどこが負担するのか。それぞれのステークホルダーがメリットを生むための収益構造を生み出せるか。自動運転の普及には、データ・アーキテクチャーを核に、新たな事業者が参入できる市場が形成されるかが大きな鍵の一つとなるだろう。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する