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オープンデータガイド第1版(7)オープンデータ利用にあたってのクリエイティブ・コモンズおよび政府標準利用規約(第1.0 版)の利用ルールについて

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オープンデータガイド1版をもとに、クリエイティブ・コモンズ(以下CC)を中心にオープンデータのライセンスにおけるCC-BY、CC0、政府標準利用規約(第1.0 版)について整理をします。

日本政府では、政府データカタログサイト試行版「DATA.GO.JP」や情報通信白書などではCC-BY、府省のホームページなどでは、政府標準利用規約(第1.0 版)を採用する方向で検討が進んでいます。

クリエイティブ・コモンズとは

まず、クリエイティブ・コモンズ(CC)については、本ガイドでは以下のとおり解説しています。

CCライセンスを提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称である。2001年に組織が設立され、2002年に米国において、利用ルールの最初のバージョンが公開されている。日本では2004年に最初のバージョンが公開された。

CCライセンスは、インターネット時代の新しい著作権ルールの普及を目指し、様々な作品の作者が自ら「この条件を守れば私の作品を自由に使って良い」という意思表示をするためのツールである。CCライセンスを利用することで、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手は利用ルールが定める条件の範囲内で再配布や自由な改変等ができる。

CCライセンスは以下の3つの要素で構成されています。

① 法律に詳しくない人でも利用ルールの内容がすぐに理解できる簡潔な説明文「コモンズ証」

② 同じ内容を法律の専門家が読むために法的に記述した「利用許諾」(ライセンス原文)

③ 検索エンジンが利用するための、作品そのもの(コンテンツ)に付随する説明的な情報「メタデータ」

この3つの要素によって、一般の方でもわかりやすい利用ルールで、法的な効果が担保されている。また、メタデータを利用してCCライセンスが適用されているデータを機械的に探しやすくなっている。このメタデータは、ホームページのソースコードに埋め込まれる情報であり、クレジットで表示すべき名前等を機械的に取得することが可能となるほか、検索エンジンで検索を行う際にはこのメタデータも検索対象となるため、メタデータを基に、CCライセンスが適用されているコンテンツだけを抽出して検索すること等も可能になる。

クリエイティブ・コモンズのライセンスについて

CCのライセンスについては、以下の6種類があります。

各利用ルールは、

①商業利用を許可するか(許可/不許可)
②改変を許可するか(許可/不許可/許可するが同一利用ルール利用)

の2つの利用条件の組み合わせである。どの利用ルールも出典表示は必須となっています。

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出所:オープンデータガイド1版

オープンデータにおいて活用されることが多いのは、CC-BYとCC0です。

CC-BYのライセンス概要

CC-BYのライセンスについては、以下のとおり整理しています。

CC-BYライセンスは、CCライセンスの中で最も利用の制約が少ない利用ルールで、基本的に出典を表示すれば自由に利用できる。各国の法制度に合わせた利用ルールが作成されていたが、バージョン4.0からは国際的に同じ利用ルールを共通に利用する方向で動いている。なお、日本ではバージョン4.0の翻訳がなされていないため、現在はバージョン2.1が利用されている。

CC-BYの特徴としては、基本的に出典を表示すれば、複製、翻案、頒布、上演、演奏、上映、公衆送信、口述、展示、録音・録画、放送、有線放送、送信可能化、伝達等の自由な利用を許諾している点が挙げられる。この際、商業的な利用も可能である。

出典を表示する際には、原作品の全ての著作権表示をそのままにして、原著作者・実演家のクレジットを合理的に表示し、原作品のタイトルを表示し、指定されたURIがある場合はそれを記載しなくてはならず、二次的著作物を作った場合、原著作物の利用を示すクレジットを表示する必要がある(CC-BYの第5条hで規定)。

また、ほかにも、許諾者からの通知があった場合実行可能な範囲で許諾者又は原著作者への言及を除去しなくてはならない(第5条iで規定)、利用が許諾されている範囲を狭めるような形でコピーコントロールを行ってはならない(第5条fで規定)、という規定がある。

CC-BYの利用ルール(リーガルコード)の全文は、以下のとおりである。コモンズ証は、一般の方に読みやすいようにしたリーガルコードの要約であって、リーガルコードの代わりになるものではない。

なお、前述のように日本国内では政府データカタログサイト試行版「DATA.GO.JP」の利用規約としてCC-BYが採用されているが、この利用規約では、CC-BYの規定に加えて第三者の権利が含まれている場合の対応等について注意喚起がなされているため、既存のデータをオープンデータとして公開する際の方法として参考になる。

出典を表示すれば、二次利用が比較的自由なライセンスとなります。

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CC-BYライセンスのアイコン、利⽤状況等
出所:オープンデータガイド1版

CC0について

オープンデータではCC-BYと並んで、CC0も広く利用されています。

CC0はCCが行っているプロジェクトの一つで、著作権が生じている著作物やデータについて、自発的に権利を放棄して、パブリックドメインにしようという試みである。

他のCCライセンスが著作権を前提として「利用の許諾を行う」のに対して、CC0は①著作権を放棄し、②放棄できない権利は無条件かつ永続的な利用許諾を行い、そして③利用許諾も無効な場合には権利行使をしないということを「確約する」という構成になっている

この宣言がなされたデータは、多くの人が様々な利用を始めることから、途中で撤回することができないことに注意する必要がある。

CC0を利用すると当該作品・データに関する著作権、著作隣接権、肖像権等の権利を放棄することを表明し、無条件かつ自由な利用を許諾することになる。

同時に、当該作品・データに関するいかなる責任も負わず、いかなる表明・保証も行わないことを宣言している。

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CC0ライセンスのアイコン、利⽤状況等
出所:オープンデータガイド1版

政府標準利用規約(第1.0 版)について

最後に、電子行政オープンデータ実務者会議において、有識者や各府省の意見を踏まえて、各府省のホームページに適用するために作成された利用ルールである政府標準利用規約(第1.0 版)について、整理をしたいと思います。

データの利用条件については、基本的には、出典を記載すれば、複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由な利用が可能である。その際の出典の記載方法については、各府省が定めることが可能で、各府省は出典の記載方法を例示する必要がある。また、著作物性のないデータも利用ルールの適用対象としている。文章表現については、一般の利用者に分かりやすいよう、平易な表現となっている。

CC-BYとの最大の相違点は、「法令・条例・公序良俗に反する利用」と「国家・国民の安全に脅威を与える利用」を禁止する条項が盛り込まれている点、編集・加工等を行ったことの記載を求めるとともに、編集・加工等した情報をあたかも国(又は府省等)が作成したかのような態様で公表・利用することを禁止する条項が盛り込まれている点の2点である。

これらの条項が盛り込まれたのは、情報提供者である各府省から、府省ホームページで公開されているコンテンツは多様であって、利用形態によっては国家・国民の安全に脅威を及ぼす可能性があるものもある、データを改ざんして虚偽の表示を行ったものについて国が当該情報を作成したとの誤認を招くことは認められない等の意見が出され、これら意見を踏まえ、国のできるだけ多くのコンテンツに適用できるものとして作成されたためである。

また、データの二次利用に制約が生じる個別法令がある場合に、主なものをわかりやすい形で紹介することとしている点も特徴である。

更に、第三者が著作権や、著作権以外の権利(例:パブリシティ権等)を有しているデータについては、特に権利処理済であることが明示されているものを除き、情報利用者の責任で、当該第三者から利用の許諾を得ることとしている。第三者の権利の有無については、できるだけわかりやすい形で明示することとしているが、各府省によって既存のコンテンツの権利関係等の表示方法が異なることから、具体的にどのような形で明示するかは各府省に委ねることとしている。

各府省は、ホームページの利用規約として、最低限、政府標準利用規約(第1.0 版)を採用することが求められており、これとは別の利用ルール(厳しい利用ルール)を一部コンテンツに適用する場合には、その具体的かつ合理的な根拠を説明する責任を負うこととされている。なお、CC-BYやCC0を採用する場合には、政府標準利用規約(第1.0版)よりも制約の緩いルールを採用することになるため、具体的かつ合理的な根拠をホームページ上で明確に説明する必要はない。

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政府標準利⽤規約(第1.0版)の概要
出所:オープンデータガイド1版

情報利⽤者の視点からの⽐較

利用者の視点からCC-BYとCC0、そして、政府標準利⽤規約(第1.0 版)を見てみましょう。

▶CC0は著作権を放棄するため、情報利⽤者は何の制約もなく⼆次利⽤が可能である。また、諸外国のデータとのマッシュアップも容易である。

▶ CC-BYは⼆次利⽤の際に出典を記載するという条件がついているため、情報利⽤者はその条件を守る必要がある。マッシュアップに関しては、諸外国でCC-BYを採⽤している例が多いことから、同じ条件で組み合わせて利⽤できる場合が多い。

▶ 政府標準利⽤規約(第1.0 版)は、禁⽌事項の追加により⼆次利⽤の範囲が必ずしも明確とは言えないため萎縮効果を生む可能性がある。また、CC-BYとの互換性がないため、諸外国のデータとのマッシュアップの際には注意が必要。

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出所:オープンデータガイド1版

とあるように、政府標準利⽤規約(第1.0 版)で規定されたデータを利用する際には、注意が必要となるでしょう。

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