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オープンデータ社会(101)公共各分野におけるオープンデータ、ビッグデータ活用

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総務省が公表した「平成25年度版情報通信白書」では、ビッグデータを国内でフル活用した場合、小売、製造、農業、道路・交通インフラの4分野で年間7兆7,700億円の経済効果が見込めると試算しています。

小売業では購買履歴の分析により効果的な販売促進が可能になり、農業では栽培や土壌データの分析による最適な肥料や農薬の提供、インフラ分野ではカーナビなどのデータを活用した渋滞解消で、燃費の向上が見込めるとしています。

ビッグデータの流通・蓄積・活用により、コスト削減やオペレーションの効率化向上、分析による顧客ニーズに応じたサービス開発などのプロダクトイノベーションが創出されます。それに伴うビッグデータ解析ビジネスなどの雇用創出、ソフトウェアやサービス開発などのビッグデータ関連の投資の増加につながるとして、経済成長につながることが期待されています。

総務省が17種のデータを対象にビッグデータ流通量の推計を行った結果によると、2012年のビッグデータ流通量は、9産業(サービス業、情報通信業、運輸業、不動産業、金融・保険業、商業、電気・ガス・水道業、建設業、製造業)の合計で、約2.2エクサバイトとなり、2005 年の約0.4エクサバイトから、7 年間でデータ流通量は約5.5倍に拡大しています。

データ流通量メディア別内訳では、2012年時点の水準で、POSデータが約0.8エクサバイトともっとも大きく、RFIDデータ(約0.6エクサバイト)、GPSデータ(約0.3エクサバイト)が続いています。データ流通量の経年推移をメディア別にみると、電子カルテデータ、画像診断データといった医療系データ、気象データ、GPSデータやRFIDデータといったM2M系データが大きく伸びるなど、公共分野に深く関連するデータが高い伸びを示しています。

調査会社のIDCが2012年12月に発表したビッグデータに関する調査「Big Data, Bigger Digital Shadows, and Biggest Growth in the Far East」によると、2020年に全世界で生成・複製されたデジタルデータの総量の規模は 40 ゼッタバイトに達し、世界の全人口 1 人あたり約 5247 ギガバイトのデータを保有する量に相当するといいます。国別のデータ蓄積量をみてみると、日本は単一国家としては米国に次ぐ世界有数のデータ保有国となっています。

医療や農業、社会インフラなど公共分野に深く関連するパブリックデータの利活用について少し整理をしてみたいと思います。

医療分野では、保険者や地方自治体、企業が健診データやレセプトデータなどの医療・健康情報から健康状況などを把握・分析し、医療情報データベースを活用した医薬品などの安全対策に関する取り組みを推進するなど、データに基づく具体的な保健指導や、個々のライフスタイルに応じた適切な健康増進や発症・重症化予防の取り組みの検討が進められています。

政府が2013年6月14日に公表した「健康・医療戦略」では、すべての健康保険組合に対して、レセプトや健診結果のデータを分析し、一人ひとりに効果的な保険指導を行う「データヘルス計画(仮称)」を策定し、事業実施や評価などを義務付ける予定です。

農業分野では、農業の現場の計測などで得られる多くのデータを蓄積・解析し、高い生産技術を持つ篤農家の知恵を人材育成や、小規模農家も含む多数の経営体で共有・活用し、収益の向上など、農業データを多面的に利活用する新たな生産方式の構築に向けた取り組みが進められています。政府では、2016年までに篤農家の知恵を含む各種データを高度に利活用するAI(アグリインフォマティクス)農業を構築する目標を設定しています。

防災分野では、一部の省庁での共有にとどまっている地理空間情報をオープンデータ化し、官民連携によりインターネットを通じて情報提供を行うことで、地理空間情報や災害関連情報を利活用できる仕組みづくりの検討が進められています。

社会インフラにおいては、老朽化していく社会インフラの維持管理・更新に必要なデータを体系的に把握し蓄積するため、2013年度から各施設の現況データなどのデータベース化を進めていきます。これらのデータを統一的に蓄積し管理するプラットフォームを構築し、2014年度から一部運用を開始する。2015年度以降は、機能強化を図り本格運用へ移行予定だ。また、2020年度までに国内の重要インフラや老朽化したインフラの20%をセンサー等の活用による点検・補修を実施する計画を進めています。

公共分野のデータで、注目されているのが、家電やクルマ、住宅、電気や水道などのインフラ、自動販売機やペットまで、あらゆるモノや場所に設置される動的でアルタイム性の高いストリームデータであるセンサデータの活用です。

センサーには、温度・湿度センサー、CO2・花粉センサー、加速度・振動センサー、湿度・温度センサー、水分・流量センサー、熱量センサー、濃度・粘度センサー、圧力センサー、ひずみセンサー、光(赤外線)センサー、地磁気センサー、画像センサーなどがあります。

センサデータにおいては、データの収集などを可能とするセンサーの小型化・低価格化とセンサーにより収集したデータを送信する通信モジュールの低価格化が進み、センサーを利用する契約者数も増加傾向にあるといいます。

センサー技術とワイヤレスネットワークの進展により、ネットワークに繋がる設備や機器が人間を介在せずに相互に情報交換を行う M2M (Machine to Machine) や IoT (Internet of Things) と呼ばれるサービスの利用が様々な分野で進んでいます。たとえば、自動販売機やエレベータ、プラント設備、橋梁など領域において、M2Mのサービスが利用されています。

世界で年間6億台出荷近く出荷されるスマートフォンには、加速度・振動センサーや地磁気センサー様々なセンサーが搭載され、GPSやRFIDを読み取るNFC(近接無線通信)リーダなどが装備されており、常時接続された巨大なセンサーのインフラ化が進んでいます。

センサデータの活用においては、現在はネットワークによる情報収集・活用が中心となっているが、センサデータからの大量のストリームデータを収集しデータを分析することによって、起きている事象をリアルタイムに把握し、農業や都市計画、環境対策、防災、資源管理、危機保全、気象・大気観測、医療、国土保全といった分野において、異常発生予測などの事象予測や新サービスの創出が見込まれています。

また、全国の橋や道路、水道といった社会インフラが一斉に寿命を迎える国土基盤ストックの維持管理や更新費用は今後増加を続け、2020 年には約12 兆円になると予測されています。そのため、センサデータを用いて、橋梁などの構造物の劣化のモニタリングを行い、構造物のひび割れや、異常な歪みなどの危険を検知することによって、事前のメンテナンスと事故を防止することが可能となり、効率的なインフラの維持管理が求められています。

交通分野では、車と車、道路と車、車と人などが相互にタイムリーな情報交換を実現できるように、地図情報や車および人の地理空間情報などのデータを蓄積し、ITS(Intelligent Transport Systems)技術の活用により、交通事故の危険や交通渋滞を回避し、安全で環境にやさしい経済的な道路交通社会の実現を目指しています。

さらに、無線通信機能を通じて車と情報をやりとりができるテレマティクスサービスにより、走行中の車の位置情報や車速、さらにはアクセル開度、ブレーキ回数、ワイパーの利用などのデータである運行情報(プローブデータ)をカーナビなどの車載端末からクラウドを通じて収集・解析することで、渋滞や混雑情報のほか、天候情報、燃費情報など様々な情報提供やサービスにも適用できます。

民間調査会社の富士経済の調査によると、2012年の世界の新車に占めるインターネット常時接続車の割合は1割未満の762万台にとどまるものの、20125年には10倍以上の8564万台の全体の約7割に拡大し、将来はネット常時接続が主流になると見込んでいます。

これらの車の移動情報を分析し、たとえば、走行距離などに応じて割引を適用する自動車保険や、おすすめの店舗の案内や、近くの充電スタンドを案内するといった走行支援をするサービスが注目されています。

 

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