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IBMのクラウドポートフォリオ、アーキテクチャー、ロードマップ

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7月31日(金)にIBMが主催する「ITインフラストラクチャー・コンファレンス2009 SUMMER」に参加してきました。本カンファレンスのテーマは「クラウド・コンピューティングで企業のITインフラが変わる~IBMのクラウドのすべてがここに」とあるように、コンファレンスのテーマのすべてがクラウドコンピューティングに関することで、これまでの日本IBMが主催した中で最大のクラウドに関するイベントとのことでした。基調講演では500名前後が参加していました。

IBMのエンタープライズの考え方とともに、印象的だった「ポートフォリオ」、「アーキテクチャー」、そして「ロードマップ」に絞ってIBMのクラウドの取り組みを整理していきたいと思います。

IBMのエンタープライズクラウドの考え方

IBMは比較的大規模な企業向けの「エンタープライズクラウド」にフォーカスしており、エンタープライズクラウドは「仮想化」+「標準化」+「自動化」を実現し、その結果がコスト削減や利便性向上につながるとしています。

IBMのクラウド・ポートフォリオ

IBMは「IBM Smart Business クラウド・ポートフォリオ」で自社のクラウドのカテゴリを整理しています。大きく分けると「パブリッククラウド(Smart Business Service)」と「プライベートクラウド(Smart Business Systems)」でサービスランナップを整理しています。IBMはクラウド月間と位置づけ、立て続きにクラウドサービスの提供を公表しています。

代表的なサービスとして「プライベートクラウド」においては、7月14日にクラウド環境をパッケージとして提供する「IBM Cloud Burst」、そしてパブリッククラウドにおいては、7月30日に「IBM Maneged Cloud Computing Saervice(MCCS)」を提供することを公表しています。今後も「情報分析クラウド」や「デスクトップクラウド」等のクラウド関連サービスを提供する予定を立てており、IBMはエンタープライズ向けのクラウドのランナップを全方位に充実戦略を展開してきているという印象を持っています。

個人的に注目しているのは、パブリッククラウドのMCCSです。競合としてAmazonのEC2/S3があげられますが、Amazonが中小企業をターゲットとしているのに対して、MCCSはそれ以上の企業規模をターゲットとしているといえるでしょう。注目すべきところは外資系のクラウドサービスは、海外のデータセンターから提供しているのですが、日本国内のデータセンターから提供している点です。企業規模が大きいほど、国内に自社のデータをアーカイブすることを重視するため、信頼性の高いネットワークと組み合わせて提供すれば一定のニーズはあるのではないかと感じています。

ガードナーの評価において、IBMはクラウドビジネスのイニシアティブをとっているという評価を出しているように、IBMのクラウドのランナップの充実と技術の裏づけは、目を見張るものがあります。NECや富士通、そして日立製作所等もクラウドのブランディングや戦略を展開していますが、IBMの戦略に追随してきているのではないかというのが個人的な印象です。

IBMのクラウド・アーキテクチャー・モデル

IBMは講演の中で『「クラウド・アーキテクチャーモデル」ができているのはIBMしかない』という趣旨の発言をし、アーキテクチャーモデルの重要性を述べられています。クラウドサービスにおいては「SaaS」、「PaaS」、「IaaS」を用意。そして、クラウド・プラットフォームにおいては、課金やID管理等の「ビジネスサポートシステム」、メータリングやモニタリングといった「オペレーションサポートシステム」を用意しています。理想をいえば、ネットワーク連携のところもあればよかったのですが、このように体系的にアーキテクチャーを整理し、実現している(しようとしている)事業者はIBM以外にはなかなか見つけることは難しいのではないでしょうか。

IBMのクラウド・コンピューティング・ロードマップ

そして、クラウドコンピューティングの導入を進めていくにあたってのロードマップを整理しています。ロードマップの流れは「データセンター集約」⇒「標準化」⇒「統合」⇒「仮想化+部分自動化」⇒「自動化」⇒「最適化」となっています。個々に解説するのは省略しますが、「最適化」のゴールとしては、「業界クラウド」、「企業グループクラウド」、「そしてセルフクラウド」をあげています。

IBMは国内においてクラウドコンピューティング事業推進部という部署を今年1月に発足し、そして今回のようなクラウド一色のカンファレンスを開催したように、クラウドビジネスにかなり比重を置いてきているという印象です。ここまでクラウドがビジネスになってきているのかといううれしさを感じる一方、日本のIT業界に身をおく立場としてはやや危機感も感じているところです。

以上かなりざっくりとした感じとなりますが、講演を聴いて感じてみたIBMさんのクラウドの印象と自分なりの整理です。Twitter中継やブロガーミーティングも含めて充実した1日でした。どうもありがとうございました。

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