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SaaS普及の鍵は公共サービス!?

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SaaSが企業の情報システムにインパクトを与えるという話はIT業界にいる方は一度は聞いたことがあると思います。期待は大きいのですが、SaaSはなかなか普及していないのが現状です。

総務省は、5月9日、「ICTによる生産性向上戦略(案)」を公表しました。ICTの生産性向上には、「ネットワーク」に重点を置いたパラダイムシフトが必要であるとし、「共通基盤」となる3つの重点分野として以下の3つをあげています。

1.ASP・SaaSの活用(最重要)

2.企業ディレクトリの整備

3.場所コードの構築

 

3つの中で最重要として位置づけているASP・SaaSの活用は、

1.認知度の向上-公益法人認定の活用、白書作成、成功事例の公表等 

2.行政や医療等における徹底活用-認定に分類を設定、活用方策の提示等 

3.世界最先端のASP・SaaS市場の整備 

 ①次世代ネットワーク(NGN)の認証・課金機能の公正競争確保
 (外資系事業者の参入も促進し、我が国ASP・SaaS市場をウィンブルドン化) 

 ②企業の国内拠点と海外拠点をつなぐASP・SaaSのグローバル需要の喚起 

 ③事業立上げ期のASP・SaaS事業者支援 

等を柱としています。

本戦略案の中では、企業の生産性を向上させるためには、実は、公共サービスの電子化を図ることが重要であるとしています。

例えば、金融機関への融資申込みに際しては、国税の納税証明書、地方税の納税書、法人の登記事項証明書等の提出を、企業は求められる。

これらの手続を電子的に行うことができれば、オフラインかつハードコピーによる提出を行う場合に比べ、生産性が大きく向上するものと期待できる。

しかしながら、我が国の電子申請の利用率(2006年度)は、国の手続で15.3%、地方公共団体の手続で17.5%であり(平成19年8月3日総務省報道発表「平成18年度における行政手続オンライン化等の状況」)、世界で40位との評価もある(「世界経済フォーラムGlobal Information Technology Report 2006」)。

その要因の一つとして、申請用ソフトの利用者端末へのインストール等が煩雑である点が指摘されているが、こうした点は、ASP・SaaSを活用すれば、克服されるものと考えられる。

また、レセプトのオンライン請求や電子カルテについてASP・SaaSを活用することも、小規模な医療機関にとって生産性の向上につながると考えられる。

個人情報等の非開示情報を含む業務について万全のセキュリティ対策を講じつつ、公共サービスにおいてこそ、ASP・SaaSを徹底活用し、費用の節減と生産性の向上を図るべきである。

なお、公共サービスにおいて、「ASP・SaaS事業者にデータを預けてしまって大丈夫か」という不安が存在することも事実である。

このため、情報開示のみならず、公共サービスに求められる情報セキュリティ対策を適切に講じているASP・SaaSのサービスであるか否かを、前述の「ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定」に反映させていくことが期待される。

また、ASP・SaaS事業者によるデータの取扱状況を、利用者側が確認できる仕組みを、契約上又はシステム上確保していくことも重要である。

更に、成功事例等を基に、公共サービスにおけるASP・SaaSの活用方策等を取りまとめて、地方公共団体や医療機関に提示することも検討すべきである。


世界的に見てICT国際競争力の遅れが目立っている日本、その中で特に公共分野においては遅れが顕著です。そのため、効率的にかつ安価にICTの利活用を広げていくためには、公共サービスにおけるSaaSの活用は重要な位置づけを占めることになるでしょう。

しかしながら、ネックとなるのは、個人情報等の扱いなどのセキュリティ対策です。そのため、本戦略(案)に書かれているように「ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定」やASP・SaaS事業者による「データの取り扱い状況」を利用者側が確認できる仕組み等の検討が必要となってくるでしょう。

また、「SaaS普及の鍵はNGN?」で述べたように公共サービスを回線認証などの機能をもちセキュリティ面でインターネットよりも優れているNGN経由で公共サービスを利用できる仕組みをつくることも重要になってくることが想定されます。

SaaS普及は、もしかしたら、公共サービスへの浸透がその鍵を握っているのかもしれません。


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