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海外記事、ブログ、記事にならない情報について、ITmedia エンタープライズ海外記事担当から一言

『ジェフ・ベゾス──果てなき野望』でAmazonの記事を書くときの違和感がかなりすっきり

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初めてAmazon.comで本を買ったのは、たぶん1997年か8年。

アカウントを途中で変えたので履歴が残っていないんですが、某IT系出版社で米国の出版社の書籍を担当していて、出版社がなかなか原書を送ってくれないので業を煮やして自腹で購入したのが最初でした。

当時は日本橋丸善とかに頼んでも、原則船便なんですごく時間がかかるのに、1週間くらいで手元にきたので感動したもんです。

それ以来、私がアカウントを持っているのを知った同僚から頼まれてゲームの解説本を買ったりしたので、購入履歴に基づく推奨システムが始まったときにはゲーム本が並んで辟易しました。

今でも強く印象に残っているのは、問い合わせのメールに数時間で返事がかえってきたこと。もちろん米国からです。しかも、個人のメールアドレスで、署名入りでした。明らかに定型文ではなく、誠意のこもったものでした。

そのメールのおかげでずっとAmazon.comには好印象を持っていました。

でも、アイティメディアで海外記事を担当するようになってからは、「なんだかまとまりのない会社だなぁ」という印象でした。 ずっと本屋さんだと思っていたのにA9という意外とすごい検索サイトを立ち上げたり、Amazon Web Servicesを始めたり野菜の配達を始めたり。

それはむしろ、面白い会社だと思わせてくれましたが、(記事担当者として)嫌な会社だなと思うようにもなりました。例えば、決算発表で具体的な数字を出さないから。

公開企業なので、もちろん売上高とか純利益(純損失のことが多い)は発表しますが、売れた本の冊数とか、記事に書きたいじゃないですか。そういうのを絶対に出してくれない。

2007年にKindleが出てからはそれが目立ちました。ハードウェアのメーカーはたいてい、「今期はiPhoneがこんだけ売れました」とか業績発表で言うのに、絶対に公表しない。

こういう変なかたくなさから、ジェフ・ベゾスの頑固さを想像するようになっていました。

Kindleの「損して得取る」な価格設定や、どんなに赤字でも設備投資をやめない「文句あるなら株売ればいい」的な強硬さからも。

出版社+Appleとの戦いからも、ベゾスCEOの戦闘的な姿勢が見え隠れ。

ジェフ・ベゾス──果てなき野望』で、その答え合わせができました。

Amazon.comは少なくとも「まとまりのない会社」なんかじゃなくて、ベゾスが目指すゴールがはるか彼方過ぎて、凡人の私には見えなかっただけでした。

ドローン配送も、オリジナル番組制作も、ベゾスの中では少しもぶれのないことなんです。

ゴールが明確に見えている人は強いですね。そのためになるのであれば自己改造さえいとわない。毎日が無事にすごせれば幸せ、なんていう凡人(それは私)はすごいなぁと思うばかり。

この本は、おおよそ時系列にAmazonが成長していく過程を紹介しています。あれとかこれとかは、そういう経緯だったんですか、ということが分かってだいぶすっきりしました。

翻訳を担当させてもらった『グロースハッカー』に出てくる、著者のクライアントの著書がリアル書店に置いてもらえなかった経緯も分かります。

べゾスのプライベートはあまり紹介されていませんが、いままであまり知られていなかった家族のことや、過剰(そう、何かがいつも過剰なんです)な性格を示すエピソードがいろいろ出てきます。

約500ページというボリュームですが、Amazonを使ったことのある人は1度は読んでみていいと思います。このボリュームで1800円というのはすごいお得だと思うし。

カバーを剥いたときのデザインもニヤリ、なので、電子書籍版もありますがAmazonから紙版を買うのがお勧めです。

Bezos

さて、読み終わったのでHatching Twitterの続きを読もうっと。

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