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記者としての取材や編集者としての仕事の中から浮かんだふとした疑問やトピックをご紹介。裁判や企業法務、雑誌・書籍を中心としたこれからのメディアを主なテーマに、一歩引いた視点から考えてみたいのですが、まあ、精密でない頭の中をそのままお見せします。

ネットで話題の、リアル「きかんしゃトーマス」。これが本物だ!

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 この顔!

 見てください。本物そっくりでしょう? 「本物」は絵本やアニメの中だけど。

 静岡の大井川鐵道が、今月12日から新金谷千頭間を一往復、客車を牽いて運転する「きかんしゃトーマス」の主人公、トーマスである。YouTubeなどに鉄道ファンによる試運転の姿が投稿され、「これは何?」と話題になっていたのだ。写真は報道公開の姿をとらえたもので、本日メディア解禁を迎えたばかり。いち早くお伝えしたい。

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 転車台に乗るトーマス。ブルーに装った機関車が向こうから見えただけで、ドキドキするのは不思議だ。

 説明はいらないと思うが、「きかんしゃトーマス」とはイギリスのウィルバート・オードリー牧師が自分の息子に語り聞かせるために作った絵本をもとに作られたテレビアニメーションだ。イギリスのソドー島(架空の島)の鉄道で働く機関車たちの、さまざまなエピソードを描く。なにより機関車に顔がついていて感情や意思をもち、人間と対等にわたりあいながら、鉄道のルールに従う(事故が多いが......)というのが、大人が見ても面白いところ。

 イギリスには「トーマスランド」という遊園地があり、電動模型でトーマスの世界を再現している。日本では富士急ハイランドに同様の施設がある。さらに、イギリスの保存鉄道で、本物の蒸気機関車にトーマスの扮装をさせて運行しているところがあり、大井川鐵道はアジア地域で初めてそこに加わることになる。

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待ち構える報道陣の前に、バック運転でやってきたトーマス。後ろのオレンジに塗られた客車とペアになるようだ。機関車も、客車も「トーマス」の世界を忠実に再現した素晴らしい出来だ。

 蒸気機関車は、蒸機や煙を吐いて、ピストンやロッドを動かして車輪を回し、走るさまが生き物のような魅力があり、世の東西を問わず擬人化の対象になってきた。日本では作家・阿川弘之による『きかんしゃやえもん』が有名だ。

 大井川鐵道の「トーマス」は、同社のC11227号をもとに仕立てられたが、素晴らしい出来である。実際に蒸気が息づいているのが、他の電動模型の遊戯施設や、アニメや原作の絵本でも見ることのできないなによりの迫力であり、魅力だ。子どもでなくても引き込まれ、楽しめる列車になることは間違いない。

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 運転日や予約方法はこのページから。実は、トーマス自体は、夏休みから秋にかけて、既に予約で一杯の状況が続いている。「トーマス」が運転される日は他のSL列車「川根路号」も運転され、こちらには今のところ余裕があるので、先回り、あるいは後追いして千頭でトーマスに近づいたり、転車台に乗ってぐるりと方向転換するのを眺めるのも楽しいだろう。千頭駅には、動かないが9600形機関車が扮装した「ヒロ」もいる。

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トーマスと相次いで走る、定期SL急行「川根路号」を牽くC5644号と並ぶ。この機関車は太平洋戦争でタイ--ビルマ間に建設された泰緬鉄道で使われ、1979(昭和54)年に里帰りを果たした。

 千頭からはディーゼル機関車が牽く、森林鉄道のような「井川線」がある。沿線の温泉や終点・井川は、イギリス人が「自分の国のような眺めだ」と毎年滞在に来る避暑地でもある。「トーマス」をきっかけに、家族連れで大井川流域の魅力を満喫されてはいかがだろうか。

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日本の鉄道最急勾配区間を2両のアプト式電気機関車にエスコートされる井川線列車。森林、ダム、湖、「イギリス風」とも言われるさまざまなシチュエーションが楽しめる。

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