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シリコンバレーのLGBT文化、過激派ISIS、後藤健二さんに見る原理主義の精神

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 後藤健二さん・・・日本で初めてフリーランス精神を世に示した人

外務省の渡航自粛要請を拒否して取材を続けた・・・・一種の原理主義精神の発露

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  <出所:http://heavy.com/news/2015/01/kenji-goto-dead-dies-executed-execution-beheaded-video-wife/  >

ちょっと乱暴な比較を試みます。シリコンバレーの多様性文化と過激派ISISには共通点と相違点があります。共に複雑系の秩序、無秩序の中での現象だと思われるからです。

 さてISISと呼ばれるイスラム過激派が日本人ジャーナリストの後藤健二さんを殺害し、国中が大騒ぎになっています。これに対する国内の反応は様々ですが、そしてマスコミは殺害された後藤健二さんを礼賛しています。これは何を意味するのでしょうか。

ISIS台頭の背景には新しいインターネット(IoT、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドサービス)があります。それはグローバル世界を形成の過程で、古い秩序を破壊し、短いにせよ長いにせよ混沌の時期を経て新しい秩序を作り出します。

世界が大きく変わり始めたのはベルリンの壁が崩れて、インターネットが解放された1990年前後からでしたが、ユーゴスラビアの分解の過程で現れた、イスラム教徒とキリスト教徒の殺し合いなど一見古い社会性対立が亡霊のように出てきました。その変化が2010年代には新しいインターネット(IoT、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドサービス)の登場により、本格化しはじめています。そして古い大量生産時代やピラミッド型組織を過去のモノとする第三次産業革命時代が来たと呼ばれ始めています。

 共通点は原理主義

 今は去る1949年の昔、英国において世界初の市民革命がおこった時、清教徒革命(ピューリタン革命)と呼ばれました。また米国建国の第一歩を記したとされる清教徒(ピューリタン)ピルグリムファーザーズが有名なメイフラワー号に乗ってボストン近郊のプリマスに上陸したのは1920年でした。清教徒=ピューリタンの主張は、英国国教会やカソリックなどの様々な教会行事の否定と聖書至上主義でした。そしてプロテスタンティズムの勇カルバン派の教え=禁欲主義を唱えていました。ピューリタンやプロテスタントは教えを守るためカソリックなどと何度も内戦を戦いました。清教徒革命(ピューリタン革命)では当時のイングランド王、チャールズ一世をギロチンにかけ、首をはねました。

英米二か国の建国の趣旨(ピューリタニズム)は明らかにキリスト教原理主義です。

この点遠くはイランのホメイニ革命、近くはアルカイダやISISの主張と基本、変わりません。

どちらも共に古い秩序に不満を持つ人々を「まるで大坂冬の陣に集まった浪人」のように集めた共通点を持っています。特にISISは世界中から古い社会からの脱落者を集めています。新しい社会の建設には人々を熱病のように動かす「プロテスタンティズムやピューリタニズム」のような原理主義の精神が必要なのです。

 相違点は経済との結びつき

 当時の英国におけるピューリタンは、教会の存在や教会の行事を拒否し、教区の外に勝手に集会を持ったため、牧師は英国国教会から給料をもらえず、信徒からの寄付に頼って暮らしていました。この一種のクラウドファンディングの中心が新興の商工業者だったわけです。こうして働いて利益を得たお金を禁欲=質素倹約により浪費せず、再投資することにより企業が拡大する資本主義の精神が生まれました。神から与えられた仕事を「決まった時間(9時から5時まで)に黙々とこなすことが死後の救いにつながる証拠(今でいう終身雇用で年金が補償される)」と言う予定説の普及も社員のモラル維持に貢献しました。

ISISの場合には石油と身代金収入といった点で経済と結びついていますが、これではグローバル社会を変革するに足る、社会的広がりをも持つモラルは誕生しません。(グローバル社会の不満分子しか集められません)

 シリコンバレーの新しい原理主義

 シリコンバレーの第一世代ともいうべきシアトルから出てきたマイクロソフトのビルゲイツ氏は、初期のIT革命にのって大儲けをしました。しかしそのお金を浪費することなく再投資し、素晴らしい会社を育てました。更に個人の資産はビル&ミリンダゲイツ財団を作り、社会に還元しました。これが有名なノブレスオブリッジ(富者の義務)ですが、その底には明らかにピューリタニズムの精神=原理主義があります。社会の為=神の為に浄財として資産を社会に還元するという思想です。

さてピューリタニズムの精神は一種の隠れた宗教として現代のシリコンバレーにも蘇っています。その代表が社員の自己表現重視、多様性重視の象徴であるLGBT差別への反対運動でしょう。アップルのCEOであるテイム・クックさんは自らゲイであることを公にする「カミングアウト」を実施しました。これはシリコンバレーの新しい原理主義=ピューリタニズムとも考えられます。そしてそれは新しいインターネット(IoT、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドサービス)と結びついています。LGBTに象徴される自己表現の自由は多様なモノやサービスを生み出す「創造の経済の基本」だからです。テイム・クックさんには確かに牧師のイメージがあります。だからパリのISISテロにも自己表現の自由を守れと言う叫びがこだまします。

 フリーランスとしての後藤健二さんへの高い評価の理由

 筆者自身は後藤健二さんが「外務省がやめろと言っても止めなかったシリア行き」の精神を日本版の「フリーランス精神の萌芽」として高く評価しています。長期雇用制度が基本の大手マスコミは、社員の保証の問題もあり、正社員記者をシリアのような危険地帯に派遣できません。そこにフリーランス記者の活躍の場が出てきます。後藤さんの死の結果、日本社会もフリーランスの存在の重要性を認め、雇われない働き方やクラウドソーシングなどで活躍する人々を前向きに評価し始めました。米国においてダニエル・ピンクが著した「フリーエージェント社会の到来」に遅れること約15年です。後藤健二さんの死などを経ながら日本でも来たるべきフリーランス社会、3Dプリンターなども含めたミニ企業家社会が到来し、日本的な新しい原理主義の精神、雇われない働き方の新しいモラルが確立するのでしょうか?日本政府にはこの点を理解してほしいと思っています。 合掌・・・

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