アップルがサムスンと知的財産権裁判で和解に動いた訳、IOTに注力し周辺でのいくさは終焉へ・・・

» 2014/08/07

ビジネスインサイダー紙はアップルの収益面での勝利が背景にあると述べています。

青がアップルの業界全体での営業利益の割合、赤はサムスンです。また差が開いて来ました・・・両社合わせて業界全体の108％稼ぎ、他社は殆ど赤字すれすれです。

＜出所：　ビジネスインサイダー＞

米国アップルが韓国サムスンと米国外における知的財産権裁判（９カ国、約５０の裁判）で和解しました。知的財産権の相互アグリーメントは締結せず、米国内では約１０億ドルをアップルが獲得して幕引きとなる見通しです。アップルは既にグーグルと和解しており、サムスンとの和解はその流れです。

■ アップルの怒り、サムソンの宣伝

アップルとサムスンの知的財産権裁判は両社にとってコストメリットが無く、法曹界だけが大儲けできる不毛な戦いですが、アップルにとってはアンドロイド陣営のモノ真似を牽制する意味、取り分けトップのサムスンを叩く意味はありました。元は故ステイーブ・ジョブズ氏のグーグルに対する怒りから始まった裁判です。サムスンにとっての唯一のメリットは、「アップルの対抗馬はサムソンである」と広く宣伝する効果でした。事実それによりサムスンのスマートフォンやタブレットが売れた面もあると見られています。

しかし市場シェアだけでは無く、一時サムスンがアップルを収益面においても完全凌駕するかと思われた両社の戦いもアップルの勝利が確定しています。サムスンも裁判のコスト面と現状の収益面を考えるならば幕引きを急ぎたくて仕方がないところです。

■ 鮮明になったサムスンの敗北

2014年第二4半期の決算発表で唯一スマートフォンの出荷数の絶対量を減らしたのはサムスンでした。また市場シェアは前年の32.5％から25.2％へと大幅ダウンです。営業収益は25%減、年率換算でのプロフィット額は３０％減です。3期連続で営業利益が下がっています。

一方アップルは13.4％から11.9%に市場シェアを減らしましたが、営業利益は１２％増加、売り上げも９％の増加です。ブラジル、ロシア、トルコ、インド、ベトナム、中国で上澄み顧客をさらっています。

サムスンは上澄み顧客の争奪戦でアップルに負け、発展途上国では中国勢などの追い上げで苦戦しています。中国では小米（Xiaomi）に負けて2位、インドでも2位に落ちました。先進国ではアップルが大きな画面のアイフォンを出す見込みです。アンドロイドの優れた点は全て取り込みます。

この傾向は今後とも続くと見られており、サムスンはスマートフォンビジネスで縮小均衡に入っています。（もっともＬＧやＨＴＣ、日本のソニーのエクスペリアも中国勢など躍進のあおりを受けています。ソニーのエクスペリアは赤字になるかもしれないと心配されています）

■ アップルのＣＰＵはTSMCへ発注

これまでサムスンが請け負ってきたアップルのＣＰＵは、次世代アイフォンから台湾のTSMCへ発注される見通しです。これでサムスンの半導体ビジネス（LSI事業）は10億ドル程度の売り上げを失い、赤字転落も予測されています。

■ サムスンはモノ支配論理重視の日本企業と同じタイプ

サムスンはある意味成功した21世紀型日本家電と考えられます。その強みは「モノ支配論理」であり、弱みは「サービス支配論理」の欠如です。日本家電はスマートテレビの入り口で「サービス支配論理」を重視せず、パネルの低価格競争を展開し、家電崩壊に陥りました。サムスンも結局、サービス面はグーグルプレイなどに頼る構造です。

■ ホームキット、ヘルスキットによる家電崩壊を避けられるか

IOT時代に対してアップルはホームキット、ヘルスキットを駆使し、アップルストアの店舗を拡大して、21世紀型総合家電メーカーを狙っています。それも大量生産できるアイフォンなどを自社生産し、アイフォンから操作出来る他の製品は大部分、他社のリスクで製造してもらい、手数料をとるリスの無いモデルです。これはアプリの開発と同じアプローチです。玉石混交の外部集合知の利用です。スマート機器（ハードウエア）開発にも集合知を利用しました。

サムスン、ＬＧは言うに及ばず日本の総合電機メーカーは全て「製品の自前主義」を採用しており、アップルのような外部集合知利用戦略はとれません。

その結果、アップルが攻勢を強めればサムスンは家電崩壊に陥るリスクがあります。それがアップルのホームキット、ヘルスキットとアップルストア充実の意味です。

今後アップルは知的財産権では無く、サムスンを家電崩壊させる正攻法で攻めるでしょう。追いつめられたサムスンは日本家電メーカーと同じ運命をたどるのでしょうか？

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躍進する中国のアップル（小米＝Xiaomi）