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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

モノのインターネット(IOT)時代に「見えない宗教」が復活する訳

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■モノのインターネットで復活する魔法、信仰、神話そして宗教

ドロップボックスやiCloudなどを素直にみると、一台のパソコンに置かれた写真やファイルが何時の間にかスマートフォンやタブレットにも入っています。また電子書籍では「途中までタブレットで読んだページがパソコンにそのまま引き継がれて」います。これって第一印象は「魔法だ!!」と言った感想を持った人々が多くいました。(問題は何故人々は科学的に考えないで魔法だ!!と言う感想を持つかです・・・^^)

 

またスマートカーやドローン型自動ヘリコプター、ソフトバンクのPepper(人型ロボット)などがいよいよ「生活世界」で活躍を始める時代が来ています。アップルのスマートフォンのシリやグーグルグラスのグーグルナウは言葉を解します。

 

そこで面白いのはモノのインターネット(IOT)がもたらす技術革新を魔法と見る見方をする人々が多くなっている点でしょう。例えばソーシャルマシンのコンセプトを提唱したピーター・センメルハックなどがそうです。

「はじめまして、Pepperです」 01篇

 

http://youtu.be/OX2-tpTkLA0

 

■  何故非科学的な見方が流行るのか?

モノのインターネット時代のスマート機器やクラウドサービス、ビッグデータを一種の新しい魔法と理解する見方以外にもIOTの進展と共に非科学的なモノの見方は非常に盛んになっています。

 

itmediaのブログを見ただけでも「10円のオレンジジュースを100円で売る方法」とか「クイズで人生が変わる」とか「センスが無いのは・・と同じ」とか凡そ科学的に説明できない物語りが読者の皆様に広く受け入れられ、喜ばれ、楽しまれています。自分探しや処世訓の方がこ難しい技術論より受ける訳ですね。(あの、決して駄目とか悪いと言っている訳では無く、寧ろ高く評価しているのでご容赦くださいm(_ _)m)

 

有名な話は米国人のかなりの人々がダーウインの進化論を信じようともせず、「人類は神が自らに似せて作られたもうた」と信じている点でしょう。ポイントは「こう言った非科学的な思考法が広く受け入れられ、また実際、社会の役に立っていると言う点」です。

キティちゃんの漫画を張った浮輪が可愛いと評判になり、ビーチに行く女性たちに人気が出たのは有名な話です。(記号的付加価値)ところが現代ではその役目をアイロボットのルンバが担っています。「ルンバは可愛い!!」「まるで生きてるみたい」と言う精霊信仰です。

 

さて社会学者のピーター・パーカーとトーマス・ルックマンはこれを総じて「見えない宗教」と呼びました。また最近の進化心理学や進化人類学の問題意識の一つに「何故宗教が自然淘汰を生き残ったのか」と言うモノがあります。判り易く申し上げれば狩猟採集時代には「非科学的な宗教的思考法は人類の生き残りの為に必要な考え方」としてホモサピエンスの遺伝子に組み込まれたと言う議論です。宗教は決して文化として生まれたのでは無く、そもそも150人程度のバンドの群れを支える人類普遍的な要素と言った見方です。

 

■  モノのインターネットの高い生産性と失業問題

これからもっと本格化する「機械との闘争」の中で失業率は高止まりします。米国では最近、景気回復によりやっと6.3%まで失業率は下がりましたが、肝心の中間層の所得が回復していません。これが有料テレビのコートカットやスマートテレビなどの普及を促しています。

 

そうした中、会社をリストラされ、またその結果、家庭が崩壊し、愛着の崩壊で心理的な病を持つ人々も絶えません。そして「自分とは何者か」「生きる意味はあるのか」といったアイデンティティと人生の意味を問い、決して科学的では無いけれども自分なりの納得できる物語をソーシャルメディアで作り上げる人々が増えています。これも一種の見えない宗教行為です。

 

 

失業問題の外にも「彼との別れは人生の転機なのかもしれない」(卒論をルソーに決めし秋の夜、君に密かに別れを告げに来)とか「子供達の結婚が全て上手く行った。一方旦那様はさえない。これで人生のバランスが取れているのかもしれない」など奥様の発想は明らかに非科学的であり、自分を納得させる為の見えない宗教的行為の一部と看做されています。

 

一方サッカーや野球、野外音楽界に集まって人々が硬い匿名のビジネスプロセスの世界から「生活世界の中で、集団で自分を回復する娯楽行為」も見えない宗教と看做されています。これを球場のWiFiネットワークやアイビーコンが強化しています。

 

■  古いブランド(神)の衰退と新しいブランド(神)の台頭

見えない宗教と言う観点から言えば明らかにブランドは宗教要素を持っています。豊後水道の西と東でとれた同じ魚が大分県側で「関アジ、関サバ」と名前がつくだけで値段が倍に跳ね上がります。(ほら、やっぱり100円のジュースは1万円で売れます)

 

ブランドには信仰と言う一種の宗教要素がありますが、クラウドコンピューティングと呼ばれる新しい宗教のお陰でIBMなどの古いブランド信仰が崩壊し、一方アマゾンやグーグル、アップルの新しいブランド(信仰)が台頭しています。

昔、ココ・シャネルは発明した香水に「シャネルの5番」と命名しました。「シャネルの5番」はマリリン・モンローが愛用したので有名になりました。しかしそれを更に有名にしたのはココ・シャネルが「孤児院の5番目の部屋」に住んでいたと言う物語です。この非科学的な物語が、人々を感動させ、「シャネルの5番」ヒットさせました。物語の活用も一種の隠れた宗教のなせる業です。一方グーグルのウエーズは車が語り、トヨタフレンドは、精霊を持った愛車に友達申請します。

 

■  モノのインターネットは様々な物語りマーケティング=神話を生み出す

モノのインターネット(IOT)の価値は「モノ支配論理」では無く「サービス支配論理」であり、データとソフトウエアが生み出すサービス価値、その上に繰り広げられる泣き笑い(喜怒哀楽)の経験であると言われています。モノのインターネットが支配するスマート工業社会において繋がり型生活者はスマート機器に友達申請したり、スマート機器と話をするなど「沢山の神話」が生み出されるでしょう。

 

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ペッパーです。ペッパー警部じゃないよ!!

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<出所:ソフトバンク>

関あじ、関さばと言うだけで値段が倍になった有名な話。

関あじ

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<出所:http://www.sekisaba.co.jp/news/index.php

 

 車が喋るグーグルのウエーズ(見えない宗教要素)

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<出所:グーグルプレイ>

 

★★ 見えない宗教―現代宗教社会学入門

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