ICT業界動向やICT関連政策を基に「未来はこんな感じ?」を自分なりの目線で「主張(Assioma)」します。

YoutubeのIPv6対応が加速させるGoogle一人勝ちのシナリオ

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こちらのニュースによると、YoutubeのIPv6対応が完了したようです。

YoutubeがIPv6対応を完了した事によって、GoogleのIPv6対応サービスの状況は以下のサービスが該当します。
Youtube、Search, Alerts, Docs, Finance, Gmail, Health, iGoogle, News, Reader, Picasa, Maps and Wave products.

Youtubeの開発者が投稿したブログの内容によるとこう綴られています。※要点のみ意訳しています。

かつて19世紀には、電話番号はわずか2、3桁だった。しかし、やがて電話が普及するにつれ、その桁は次第に増えて行き、今日では10桁程の番号をダイヤルする必要がある。私達はこの歴史的な電話という文化から今何を学ぶべきだろう?

私達が利用しているPCにも電話番号のようなアドレスが与えられている。そして、この番号もまた電話番号と同じように、より多くの人々がインターネットに繋ぐ事を望んだため、桁を増やす必要性に迫られている。

現在主流なIPv4と呼ばれるこのインターネット上の電話番号は2000年に約50%が消費された。そして、2010年現在、IPv4の利用可能な残りアドレスは全体の10%を割ってしまった。

しかし、悲観する事は無い、希望はある。その答えはIPv6を利用する事だ。

積極的にIPv6を推進するGoogle。今囘はGoogleがIPv6対応を加速させれば、益々Googleが一人勝ちしていくかもしれないという、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な考察を展開してみたいと思います。

■インターネットの変化の兆候■
先日開催された、NANOG47で紹介された、Labovitz_ObserveReport_N47_Mon.pdfから、二枚のスライドを紹介します。

まず、一枚目がこちらです。
Oldinternet

これは、インターネット上に存在するATLAS10と呼ばれる、トラフィック観測システムのデータを基に作成された、インターネットトラフィックを誰がどのような経路でエンドユーザへ届けているのかといった、相関関係を表した図になります。

この図から読み取れることは、世界で約10社あると言われているTier 1 プロパイダと呼ばれるグループ間を接続しているネットワークから、その他ISP、そして更に下流へというトラフィックの流れがあった事がわかります。世界中に個人や企業のHPが点在していた時代、インターネットのビジネスを行うには、全世界の経路情報を交換しあっている、Tier 1 プロパイダと接続すること無く行うことは出来ませんでした。1995年から2007年の現在まで、このトポロジーは変化することなく、続いてきました。

そして、こちらの二枚目を御覧下さい。
Newinternet
これは、現在のトラフィックの相関図を表した図になります。
Tier 1は隅においやられ、"Hyper Giants"と呼ばれる存在が台頭してきました。

"Hyper Giants"とは、Tier 1経由の接続に頼らず、Tier 2/Regional プロパイダーから直接ピアリング接続を依頼される、GoogleやYahoo等の大手コンテンツプロパイダーやLevel3、アカマイ等に代表されるCDNグループが該当します。

近年、これらコンテンツプロパイダーが提供する動画サービスや、リッチコンテンツへのアクセスが増加したため、各ISPはコンテンツプロパイダーに対して直接ピアを貼る事が多くなってきました。そして、コンテンツプロパイダーは自社の提供する動画等の品質を向上させるために、CDNを利用する傾向が増え、各ISPはCDNとも直接ピアを貼るようになってきました。

これは、Tier 1経由のトランジット接続を利用するより、トラフィックが大量に発生するCDNやCPと直接ピアリングした方が、ISPの経営としては安くなる事が大きく影響しています。

その結果、2007年までのTier 1無くしてインターネットが成り立たなかった時代には、Tier 1リンクの増強を行う事が重要でしたが、2007年以降、Google、Yahoo、Youtubeといった特定サイトの人気が高まるにつれ、こういったコンテンツプロパイダーやCDNとピアリングすることの方が重要になってきました。

"Hyper Giants"と呼ばれる存在は現在約30社あり、この30社が全世界のインターネットのトラフィック量の約30%を占めています。そして、このHyper Giantsを含む約150のASから発生するトラフィックがインターネット上のトラフィックの50%を占めると言われています。数年前まではこれだけのトラフィックを発生させるためには、1000程度のASの合算値だったのですから、如何にHyper Giantが強大な勢力であり、トラフィックの集中化が起きているかが、お分かり頂けると思います。

■Hyper Giantsは何故生まれたか?■
インターネットのビジネスは、基本的に「より多数のユーザを集めた者が勝つ」ビジネスです。広告収入を期待するにしても、SNSを開設するにしても、よりユーザ数の多い所に人は集まります。ですから、強い者はより強くなる傾向があり、その結果トラフィックも人気コンテンツを抱えるコンテンツプロパイダーの基に集約されていきます。そして、"Hyper Giants"が誕生し、今現在もなお、その存在は日を追うに連れ強大になり、全てを飲み込むブラックホールのように成長を続けています。

そして、もう一つ近年"Hyper Giant"に新たな勢力が加わろうとしています。それは"クラウド"です。アプリケーションがクラウド化され、特定のDCへのトラフィ付くが増加し、クラウド用に建造される巨大なiDCが"Hyper Giants"の仲間に入ってきているとの事です。

クラウド化の流れは今後、確実に浸透していくことでしょう。そして、その流れは"Hyper Giants"を更に強大な物に成長させることでしょう。

■IPv4アドレス枯渇対策で品質格差が起きる■
 冒頭で述べたように、既にIPv4のアドレス残り数は全体の約10%を割っています。今現在、世界の様々な方々がIPv4アドレス枯渇対策について日々検討されています。その中の対策案の一つに、LSN(Large Scale Nat)と呼ばれるIPv4延命用の装置を導入する案が検討されています。

 LSNとはプライベートIPアドレスをグローバルアドレスにNAPTしてあげるための装置です。これが導入される事で、複数のプライベートIPを一つのグローバルIPに変換出来るため、グローバルIPアドレスの節約になると考えられています。インターネットに接続するためには、グローバルIPアドレスが必ず必要になりますから、グローバルIPアドレスの枯渇が迫っている今、LSNには大きな期待が寄せられています。

 一見素晴らしい技術にも感じますが、LSNには様々な課題があり、現在懸念されてる事のうち、重要な物を紹介します。

・1ユーザが同時に利用可能なセッション数が制限されてしまう。
 →google MAP等の大量のセッションを発生させるAjaxタイプのアプリケーションが正しく動作しない可能性がある。
  セッション数を20~30に制限すると、Youtubeの視聴に影響が出てくると言われています。
・ペイロード部分に埋め込まれたIPアドレスが存在するアプリケーションが正しく動作しない。
 →例 SIP

こういった事が発生すると予想されているので、結果としてLSNが導入されたアクセス回線は品質が低下するのではないかと懸念されています。

一説によると、リッチコンテンツの提供を推進しているGoogleは、このLSNが導入されるのを嫌って、LSNの影響を受けないよう、自社のコンテンツのIPv6化を推進しているとの噂も存在します。LSNを導入した時に想定される事例で自社のgoogle mapが表示出来なくなるかも?と、よく取り上げられるので、危機感は他のコンテンツプロパイダーより強いのかもしれませんね。

■より強い者が、更に強くなる■
LSNが導入されたら、どうなるのかを図示したものがこちらになります。
Futureinternet
※実際はIPv4とIPv6異なるIXPを経由するのではなく、デュアルスタックになると考えていますが、わかりやすくするために、経路を分けています。

Google等のように儲かっている企業は、体力のあるうちにIPv6化を推進していくでしょう。そしてGoogleはYoutubeのIPv6対応が完了した事により、主要なサービスのIPv6対応が完了させました。しかし、IPv6化出来ないCPやCDNはどうなるでしょうか?

自分達の知らない所で、ISPがLSNを導入していたら?ある日突然、自社のAjaxを多用したリッチコンテンツの動作速度が落ちたりといった、品質低下が発生するかもしれません。もしかすると、Ajaxの利用を停止して、リッチではないコンテンツを提供せざるを得ないかもしれません。

しかし、IPv6の通信経路にはLSNは存在しませんから、Googleは何の影響も受けることなく、従来通りのAjaxを多用したリッチコンテンツの提供を進めていくでしょう。

この結果、IPv6対応が出来ればリッチコンテンツを提供するのに有利な環境になり、IPv4のままで行けばリッチコンテンツの提供をインフラの品質の問題という、コンテンツプロパイダーの管轄外の理由で制約を受けてしまうかもしれません。

他コンテンツプロパイダーがIPv6化を様子見している間に、Googleは着実にIPv6化を進めています。IPv4枯渇が更に深刻化し、LSNが導入された暁には、Googleと、IPv4に拘り続けるコンテンツプロパイダーの間でコンテンツの品質の差が生まれる事が予想されています。「より多数のユーザを集めた者が勝つ」インターネットビジネスの中で"Hyper Giant" Googleのサービスが使えるのなら、わざわざユーザは品質の劣化した他CPのサービスに拘らず、Googleを選ぶ可能性が高くなると推測する事が出来るのではないでしょうか。

そうなれば結果として、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話に思われるかもしれませんが、「ISPや通信事業者にLSNが採用されIPv4アクセス回線の品質が劣化すれば、IPv6でリッチコンテンツを提供出来るGoogleが一人勝ちする」といったようなことも、あながち言えなくないのではないでしょうか?

世の中は変化に対応した者だけが生き残る」ダーウィンはこのように述べています。インターネットに今起きている「変化」を察知し、対応した者が生き残っていく、そんな事を感じさせる地殻変動が今のインターネットには起きています。

■Hyper GiantsがIPv6化を促進させる?■
もし、上記のような問題が発生して、Googleに追いつけ追い越せでHyper GiantsがIPv6対応を完了させたらどうなるでしょうか?

国内ではNGNのIPv6対応時期が2011年4月に決定し、この頃からアクセス事業者がIPv6に対応すると予想されています。そして、現在主流のWindows、Macといったクライアントの大半はIPv4/IPv6どちらでも対応可能です。この状態で、各ISPがIPv6を払い出せる状態が完成し、コンテンツがIPv6に対応してるなら、大半のクライアントはIPv6を優先的に利用します。

現在既に30%のトラフィックを発生させていると言われているHyper GiantsがあっさりとIPv6に対応してしまえばどうなるか?一般ユーザはIPアドレスのバージョン等意識しませんから、気づかないうちに「IPv6」を利用する事になるでしょう。

Hyper GiantのIPv6対応次第で、意外と早くIPv6の時代が来るかもしれませんね。

Comment(2)

コメント

本当に素晴らしい記事を次々に出していて凄いですねー。

本稿に関して2点。

確かに、Hyper Giantというものの整理は良いポイントですね。コンテンツ事業者は、Tier2くらいの人たちとも普通にpeerすると思います。より直接的にエンドユーザに接続したいと思っていて、それが高じて自分でネットワークインフラを展開するようになっているからで、結果的にTier1要らずになっている、と。Hyper Giantというカテゴリによる整理は、コンテンツ事業者によるネットワークインフラ展開が一巡したということを意味しているかも知れないですね。そうなると、本当にカスタマベースを持っているアクセス事業者はどうにかなるにしても、トランジットプロバイダは上手に商売しないと行けなくなりそうかもしれないですね。

クラウド事業者がこのHyper Giantに入ってくるという言い方は、僕にとってはどちらかというと、コンピューティングリソースのアウトソース先という意味合いで、超大規模にふくれあがったホスティング事業者、というほうが分かりやすいと思いました。


次に、GoogleのIPv6対応。これは、勝ち組と負け組がはっきりし始めたということではないかと思います。国内大手が水面下で着々と準備を進めている気配を見ると、ここ1年くらいでこのコントラストがもっとはっきりすると思いますね。そうなると山は動く、と言うところでしょうか。

前村さん

コメント有難う御座います。お褒めの言葉も有難う御座います!
googleさんがブロードバンドサービスの開始を発表し、本当にHyper Giantsにとって、Tier1やトランジットプロパイダ要らずになってきていますね。

前村さんが、「そうなると山は動く」と言うと、説得力ありますね!今のインターネットは色んな意味で変化の時期なので、これからもウォッチしていきたいと思います。

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