インターネットが登場してから時間が経つに連れ、インターネットに接続されるクライアントの数は日を追う事に増え、インターネットの成長は留まる事を知りません。今日はそんな成長し続けるインターネットを支える巨人、Hyper Giantの一角、CDN Akamaiを紹介します。
■CDNとは?■
CDNとはContents Delivery Networkの略です。
一般的な企業用ウェブサイト等を構築する場合、大量のクライアントからのリクエストに応えるため、サーバの手前に負荷分散装置を設置する事が一般的です。しかし、googleやYahoo等の世界中からアクセスされるような人気のあるサイトへは大量のクライアントからのページリクエストが発生します。このような大人気のサイトに対するリクエストを処理するためには、負荷分散装置による対処方法だけでは、物理回線以上のトラフィックが集中すれば対処出来ませんし、サーバや負荷分散装置事態が過負荷状態になれば、エンドユーザに対して「遅い」「サイトが見えない」等の不快な思いを体感させてしまいます。
更に近年では、音楽サイトや、youtube等の動画サービスが人気を博していますが、コンテンツがリッチになり、一つ一つのファイルサイズが大きくなってきました。このようなファイルサイズの大きいコンテンツをインターネット上で配信すると、インターネットの回線を圧迫し「ダウンロードに時間がかかる」「全然再生されない」といったストレスを感じさせる原因となります。
CDNとはこのような大量のトランザクションの一極集中の緩和と、トラフィック転送をスムーズにする事で「より多くのユーザへ」「安定した品質で」「快適に」といった、ユーザがよりコンテンツを楽しんで貰えるよう、コンテンツ配信を最適化します。
■オバマ大統領就任演説にも貢献したAkamai■
2009年1月オバマ大統領の就任演説がインターネットでライブ中継されました。この時の視聴者は全世界で約700万人と言われています。このライブ中継に必要なトラフィックを仮に1ストリームが300Kbpsと仮定しても、約2.1Tbpsの処理能力が必要になります。これだけのトラフィックとトランザクションを「ベストエフォート」なインターネット上で提供する事はAkamaiの存在無くして行う事は出来なかったでしょう。
■Akamaiを支える技術■
エンドユーザに対して快適なインターネット体験を届けるため、Akamaiではトランスポートの改善、ルーティングの最適化、アプリケーションの最適化といった三つのアプローチを行う事で実現します。
・Edge platform
Akamaiは全世界に存在する約57000台のサーバから構成される「Edge Platform」に支えられています。
この「Edge Platform」は以下のメリットをもたらします。
- オリジンサーバのコンテンツをキャッシュし、オリジンサーバの負荷を軽減する
- 通常の数十倍から数百倍のピークトラフィックであっても簡単に吸収する
- 全世界に分散配置されているため、ユーザの最寄のサーバから高速にコンテンツを配信する
- DDoSアタックに対しても、Edge Platformが防波堤になる
・Sure Route
通常インターネットの世界はBGPの経路情報によって、エンドユーザからサーバまでのトラフィックの通り道が決定します。しかし、BGPによる経路情報は必ずしも最短というわけではなく、東京のユーザが大阪の企業のサイトへアクセスした場合に、必ずしも日本国内で通信が完結している保証はなく、時には地球を一周してパケットが到達するケースも存在します。これは何故でしょうか?
CDNを利用しないサイトに対するアクセスは、一般的にエンドユーザからサーバまで経由するルータの数は平均17hop、遅延は約120msecかかると言われています。120msecは大西洋を横断する距離的遅延が主な原因です。距離的遅延が改善されれば当然結果は良くなりますが、通常ISPは収益を向上させるため、基本は安いピアリングを多用するため、どうしても遠回りや、遅い回線を迂回する事になってしまいます。インターネットは地域レベルの障害に対する考慮は施されていますが、品質についての考慮はされていないのです。
よって、ISPが経路交換に利用しているBGPの経路情報によるルーテイングは「品質」ではなく、「利用料の安い=品質の低い」経路を利用する事が多くなるという事態に陥ってしまいます。
Akamaiでは、Edge Platfor内にサーバ間のレスポンス時間や、パケットロス、回線の状態といった情報を常に監視するシステムを設置しており、ネットワークの状態を把握しています。この情報を基に独自のアルゴリズムによって経路情報を生成し、エンドユーザからサーバまでBGPに依存しない高品質なコンテンツ配送経路を確立します。この経路をSure Routeと呼びます。
・ラストマイルアクセラレーション
オリジンサーバ側で圧縮されていないコンテンツも、Edge Platformで圧縮し、配送効率を向上させます。具体的にはユーザからのリクエストに「Accept-Encording:gzip」ヘッダが含まれる場合に、HTML等のレスポンスオブジェクトをgzip圧縮して返信します。現在のGmailやGoogleMap等の主要なリッチコンテンツはAjaxによるウェブサイトのデザインを行う傾向があります。Ajaxで構成されたウェブサイトは、通常多数のJavaScriptやCSSといったテキストファイルをユーザがサイトにアクセスすると大量にダウンロードします。テキストファイルは実サイズの約20%まで圧縮する事が可能であり、ページ表示速度を大幅に改善します。
・プリフェッチング
Edge Platformがリクエストされたサイト構造をスキャンして、ユーザがまだクリックしていないページ等に存在する画像やスクリプト等を先読みします。こうしておく事によって、ユーザがクリックした時には既にキャッシュされているためレスポンス速度を向上する事が可能になります。
■何故Akamaiは生まれたか?■
1995年 WWWの考案者であるTim Berners-Lee博士の一つの予見がきっかけとなりました。博士は将来的にインターネットは世界中の人々に愛され、爆発的に発展し、イヅれその爆発的なトラフィックによって、自らの崩壊を招く事になるのではないかと予想しました。
その予想を解決するために、Akamai創業メンバーでもあり、並列アルゴリズムのエキスパートでもあるTom Leighton博士がインターネット上のコンテンツ配信のあるべき姿を検討するきっかけとになりました。そして、MITの優秀な研究生が協力し、Akamaiが産声を挙げましたた。
2010年現在。Tim Berners-Leeの予想した状況は訪れており、Akamai無くしてYoutubeやAmazonは快適なサービスを提供する事は出来なかった事でしょう。
Akamaiは全てのインターネットユーザに快適なウェブ体験を提供する事を目的として、現在世界中の約1000拠点に合計約57000台のサーバを所有しています。これはインターネット人口の約85%のユーザを1ホップでAkamaiに接続する事が可能である事を意味します。
■Akamaiを見ていると、インターネットの現在と未来が見えてくる■
このインターネットを支える巨人は、インターネット上のコンテンツのリッチ化が加速している現状と、ストリーミングトラフィックの需要増を想定し、2010年度には過去10年間に行った投資額と同レベルの設備増強を一年間で行うと言っています。
現在のトラフィックは日常的に2Tbpsで推移しており、100Tbpsのトラフィックに対応を求められる時代はそう遠くない時代にやってくると彼らは考えているとの事です。
また、彼らはP2Pによるコンテンツの安心・安全な配信方法の研究、ライブストリーミングの配信研究にも力を入れています。1995年に既に今日のインターネットの状況を予見していた天才集団。これからも目が離せませんね。
■参考情報 ブロードバンドの平均速度■
Akamai観測による、2009年Q3時点の世界のブロードバンド平均実行速度
※カッコ内の数字は前年同期比
Global 1.7Mbps(13%)
1 South Korea 14.6Mbps(16%)
2 Japan 7.9Mbps(11%)
3 Hong Kong 7.6Mbps(13%)
4 Romania 6.2Mbps(12%)
5 Sweden 5.7Mbps(6.2%)
6 Ireland 5.3Mbps(73%)
7 Netherlands 5.2Mbps(18%)
8 Switzerland 5.0Mbps(1.0%)
9 Denmark 4.8Mbps(7.7%)
10 Czech Republic 4.8Mbps(23%)
...
18 United States 3.9Mbps (-2.4%)

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