Google 1Gbpsブロードバンド計画に刺激され、カナダのキャリアであるSHAWも2010年4月からの1Gbpsトライアルの開始を宣言しました。
そこで、今囘は1Gbpsの動向と、結局それが消費者にとってどんな影響をもたらすのかを考察してみます。
■日本の1Gbps対応状況■
日本については、KDDIさんが提供する「ギガ得プラン」をアクセス回線として利用する事で、ISP四社が1Gbpsに対応しています。関西圏のみの提供となりますが、K-OPTさんが提供するeo光ネットでも1Gbpsを利用する事が可能です。
K-OPT eo光ネット
KDDIさんの提供する「ギガ得プラン」を利用する事で1GbpsとなるISP
au one net
@nifty
BIGLOBE
DTI
■海外の1Gbps対応状況■
海外でも実は既に1Gbpsのサービスは始まっています。香港最大のキャリアであるHKBNと、ポルトガルのケーブルテレビ会社大手のZON Multimediaです。ZON Multimediaはポルトガル最大のコンテンツ配信事業者でもあります。
ポルトガル ZON Multimedia
香港 HKBN
■1Gbpsの提供を予定しているキャリア■
現時点で1Gbps化をアナウンスしている企業は以下の通りです。
- カナダ SHAW 2010年4月からトライアル開始
- オランダ Reggefiber 時期未定
- 米国 Google 時期未定
- ドイツ NetCologne 2010年
■1Gbpsの理想と現実■
時折よく見かけるのが1Gbpsのサービスが始まれば、DVDクラスの画像データのダウンロードが数分で終了するといったような文章をみかける事があります。しかし、現実的にはそういった状況になるにはある程度条件が必要となります。
こちらに、インターネットの構造を簡潔に表現した図を用意しました。
インターネットのコンテンツ配信を考える時には、この図のようにコンテンツを提供するコンテンツプロパイダー(CP)から見て、エンドユーザまでを四つの区間に分割して考えます。
ファーストマイル
CPのオフィスやデータセンターから、ISPの接続部分までのネットワーク
ミドルマイル
Internetから、エンドユーザが加入するローカルISPのコアルータまでのネットワークを指します。
2ndマイル
ローカルISP内の拠点間を結ぶネットワーク
ラストマイル
ローカルISPから、一般家庭までのネットワーク
このような四つの階層で考えると、様々なキャリア/ISPが発表している「ブロードバンドサービスの1Gbps」というのは、ラストマイルの1Gbps化であるという点であり、実際の効果は限定的であるという事です。たとえラストマイルが1Gbps化されたとしても、ミドルマイル、ファーストマイルは他社の設備の状況に左右されますから、格段に体感速度が変わるかというと必ずしもそうではないという点に注意しなければなりません。
解り易い例を一つあげるとすると、日本は皆さんもご存知の通り、海に囲まれた島国です。米国や中国のサイトにアクセスするためには、この海を超えていかなくてはなりません。海を超えて行くために必要な海底ケーブルの代表的な物に日米中間を結ぶTrans-Pacific Expressと呼ばれる物が存在しますが、Trans-Pacific Expressの最大容量は5.12TBpsです。※海底ケーブルは他にも存在します。
5.12Tbpsしかないという事は、1Gbpsのユーザが最高スピードまでの通信を行った時に、5000人までしか最高速度を体感する事が出来ません。実際にはこういった事態に陥らないように様々な工夫が施されていますが、ラストマイルだけを1Gbps化したとしても、インターネット全体の通信において1Gbpsの速度とはならないという事を理解しておいた方が良いでしょう。
■局所的に速度を上げても効果は薄い、足並みを揃える事が大切■
インターネットは複数の組織によって構成されたネットワークです。ですから、特定の1事業者だけが1Gbps化をしたとしても効果は薄く、全体で足並みを揃える必要があります。
インターネット全体の体感速度を向上させるには少なくとも以下のステップを踏む必要があります。
Step1.各事業者の中で帯域増加を行う
Step2.地域、国単位での帯域増加を行う
Step3.国際ケーブルの増強を行う
現在はStep1において1Gbps化が始まったという事であり、全体の体感速度向上までにはまだまだ時間がかかるでしょう。大切な点はStep1からStep2に移行するためには、何らかの国家的な働きかけが重要になる事が多いという点です。実際、韓国、米国については国家政策が大きく関わっています。
米国FCCの目標は1億世帯に対して100Mbpsを提供、韓国は2012年までに大都市圏での1Gbps化を施策として打ち出しています。
■他とは事情の事なるGoogle■
これまで説明したように局所的に速度改善しても効果は薄く、インターネット全体で足並みを揃えないとユーザ満足度は通常向上しませんが、自らがインターネット最大のコンテンツプロパイダーであるGoogleだけは他と少し事情が違うと言えます。Googleのブロードバンドサービスに加入したユーザはYoutubeにアクセスする際に他のISP等を経由する必要性が無く、快適にアクセスする事が出来る点です。※Googleの設計次第ですが。通常は自社のコンテンツに対するアクセスはInternetを経由させる必要はありません。
先程のインターネット全体の体感速度アップのStep1を実行するだけでGoogleは自社のユーザに対して体感速度を向上させる事が可能になります。
Google以外のCP、例えばニコニコ動画が画質を向上したいとしても、インターネット全体の速度向上が見込めなければ、ダウンロード時間が長くなり、ユーザの操作性を損ねます。しかし、ファーストマイルからラストマイルまでを全て自社の都合だけで提供出来るようになるGoogleは、インターネットビデオの品質争いにおいて他CPより有利になると言えるでしょう。
■油断は出来ないGoogle■
では、かといってGoogleが1Gbps時代に、必ずしも有利かというと「もしかすると…」という奇妙な事象が起きている国があります。それは、世界で最もブロードバンドの普及が進んでいる韓国です。
googleの最も大きな強みは検索エンジンとして圧倒的なシェアを誇っている点ですが、韓国だけは事情が異なります。米調査会社comScoreの調査によると、2009年4月の韓国の検索エンジンシェアは以下の通りです。

Googleのシェアは僅か7%しかなく、Naverと呼ばれる検索エンジンを運営する、NHNが独走しています。Googleの検索エンジンは検索結果の表示スピートに徹底的にこだわり、シンプルに構成されています。このシンプルなGoogleの検索エンジンに対してNaverのトップ画面はとてもゴテゴテしており、Googleのシンプル差とは180度異なります。
そして、検索結果も異なります。Googleは与えられた検索キーワードに基づいて基本的にはウェブページからの検索結果を返します。Naverは一つの検索ワードから、ウェブページの検索結果は当然として、その言葉に関連する動画や画像、ブログの口コミ情報まで、多様な検索結果を返してくれます。これをNavarは「横串検索」と呼んでいます。
国民性にもよるのかもしれませんが、Naverの検索結果には、ハイブロードバンド時代を象徴しているようにも感じます。ダイアルアップが当たり前だったころには、画像中心のサイトより、文字中心のサイトの方が閲覧が快適でした。しかし、帯域が高速になるにつれ、文字中心のサイトは低迷し、画像が多いサイト、今では動画のCM等も増加してきました。
検索エンジンもGoogleはダイアルアップ時代から当時と変らず、シンプルな文字主体の構成で、人気を博しているのは事実です。しかし人々の欲はいつの時代も尽きることはありませんから、世界中がハイブロードバンドが当たり前になったとき、今のようなシンプルな検索結果だけでなく、Navarのようなリッチな検索結果を求める人達も増えてくるかもしれません。
皆さんも一度Naverの検索エンジンを試してみて下さい。Googleとは違って特にエンターテイメント系の検索は結構面白いです。
今流行の タイガー・ウッズや、孫正義を調べてみて下さい。特に孫さんなんて誕生日まで表示されます。
映画というキーワードで検索すれば、今上映中の映画、公開予定映画という括りが表示され、映画を検索する事が可能です。
ドラマと入力すると韓流ドラマに偏るのはご愛嬌といった所でしょうか。
数学的なアプローチで技術的に解決する部分においては、常にGoogleは他を圧倒出来る力を持っています。しかし、Google Buzzが非難を浴びているように、Googleのエンジニアは「人が楽しい」と感じるサービスを作るのは苦手なように感じます。Googleのサービスは便利だけど、楽しいかというとそうでは無い物が多いように私は感じます。
Naverは、画像あり、動画ありで、ブロードバンド大国韓国ならではのリッチな検索エンジンで、検索するのが楽しくなるUIです。もし、世界中でブロードバンドが普及し、帯域が増加する事で、多少の画像が含まれた検索結果を表示しても、体感速度がそれ程変わらない時代になれば、特に女性やお年寄り達に受け入れられるのは「Naver」のようなゴテゴテしたビジュアルの検索エンジンかもしれません。
そうなったとき、韓国の検索エンジンのシェアが物語るように、検索エンジントップのGoogleも方向転換を迫られる時がくるかもしれませんね。


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