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車載コンピュータ小史

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ECUというと、Engine Control Unitと思う人とElectric Control Unitと思う人がいる。
それはなぜか? というのは、次の文を読むと分かるかもしれません。
もとは、別の文章用に準備したものですので、論文調はご容赦ください。
では、

自動車にコンピュータが搭載された嚆矢は、フォルクスワーゲンタイプ3の燃料噴射装置であり、1969年のことであった。また、1975年には日産フェアレディZが採用するなど徐々に市販車クラスにおいても燃料噴射制御用途として普及し始めた。この動きの背景として、1960年代から1970年代にかけて行なわれたアメリカ合衆国政府内での自動車廃棄物規制への対応や、1973年から1974年にかけて起こったオイル・ショックの影響で市場から大排気量や大馬力自動車に対する疑問が突きつけたことなどが挙げられる。

この動きの中で、1970年代後半から1980年代中頃にかけて、ほとんどの自動車メーカーはキャブレタ(気化器)を廃止し、電子回路で制御を行なうインジェクタ(燃料噴射機)を採用するようになった。電子回路あるいはマイクロ・コンピュータの技術が進化し、インジェクタに必要な能力や形状(大きさ)を提供できるようになったことが大きな要因となっている。

行政的な側面では、1988年からカルフォルニアで適用された自動車へのOBD-I搭載の義務付けの影響は大きい。OBDは、カルフォルニア大気資源保護局が研究していた概念であり、車両から排出される汚染物質を抑制するための電子システムとその故障を診断するためのシステムである。その後、1996年以降に全米でOBD-Iの欠点を改善したOBD-IIが適用され自動車へOBD-II搭載が義務付けられた。このことにより環境対策としてのオンボード・コンピュータはその存在を確立したと言える。OBD-IIは、ODB-Iを拡大したもので自動車の排気ガス制御状況を車載コンピュータ(on board computer)でモニターすることを義務付け、そのコネクタ形状などを規定している。 1990年代からは、車載コンピュータは、燃料系の制御に加え、走行支援システム、ブレーキ・システム、走行計などの制御なども担当するようになり、ECU(電子制御ユニット)へと進化していった。

ECUの用語の変化という視点では、On-board computerの主な用途が、排出物規制を実現するための燃料噴射制御とそのモニターであった時期が長く、本来ならECUであるエンジン・コントロール・ユニットが実態に即した呼称であったが、1990年代以降、車載コンピュータの用途が拡大するにつれ、ECU(電子制御ユニット)とするのが相応しくなり、今日ではECU Electric Control Unit(電子制御ユニット)と認識されるようになったとするのが最も実態に近い説明であろう。また、今日ではOBD-IIを通じてiPhoneをオンボード・コンピュータとして使用するなど、新たな展開が始まっているように見える。

参考資料:

http://en.wikipedia.org/wiki/On-board_diagnostics#History

自動車用語中辞典

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