「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

「Tポイントカードお持ちですか?」が面倒なので、いつも「持ってない」と答える

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コンビニや量販店など、何か買い物をするたびに面倒でならないことがある。それは店員からのとある事務的な声かけだ。

Tポイントカードお持ちですか?」
財布のなかに入ってはいるのだが、いつもこう答える。

いや、持っていません――。

こちらは雑誌1冊買うだけ、なるべくあっさり済ませたい。カードを出すのが面倒なのだ。そもそも200円で1ポイントというメリットに何のメリットも感じられない。最近はあらゆる場面で同じフレーズを聞かされることが多く、もはや「持っていない」と答えることすら面倒になっている。

元々、競争の激しい小売業などが「顧客の囲い込み」のために取り入れたポイント制度。ところが、いろいろな業界が導入して買い込み効果が薄れた今、その目的は「消費者はどんな行動を取っているのか」というデータ分析に移りつつある。

とある企業は「DVDをレンタルした消費者はスナック菓子を購入する比率が高い」という結果にたどり着き、それに従って「お菓子メーカーとスナック菓子の共同開発を始めた」という具合である。

自宅で映画を観る人の多くは、スナック菓子をつまみながら――。わざわざデータ分析するまでもなく、ごく当たり前の話だろう。見えている事象に当たり前の答えを当てはめたに過ぎず、いわば「雨が降ってきたから傘をさす」という発想に近い。これでは消費者に刺さるはずがない。

見えないデータから意味や背景を探って「売れないを売れるに変える」――。

これこそ真のデータ分析であり、マーケティングの醍醐味であり、またライバル社と差別化を図る武器となる。そのコツは、分析する際は必ず「オリジナルの仮説」を加えて考えることである。

消費者の心をつかむ逆説的シカケ

とある書店のコンサルを手がけているときだった。煌びやかな女性ファッション誌が並ぶ一角に、あえて株式や保険や不動産投資といったお堅い金融コーナーを設けるという販促企画を立てた。

「......何で、女性誌コーナーにマネーの話?」

訝しげに見つめる女性がいる一方、お目当てのファッション誌そっちのけでマネー本を貪るように立ち読みする女性もけっこう現れた。

なぜか。
働く女性たちはマネーの話が知りたくて仕方ないはず――。そんな「オリジナルの仮説」を立て、女性の潜在ニーズを掘り起こしたからだ。

この企画を手がけた当時は1990年代後半。まだネット証券は一般的でなく、女性がお金に関心を持つのはあまりいい印象を持たれない雰囲気があった。一方で、書店の金融コーナーは男性ビジネスマンばかり、女性にとっては近寄りがたい。

だからこそマネー関連の本を女性コーナーに移し、女性の心に刺さるPOPを飾れば、きっと関心を集めるだろうと考えた。女性向け売り場に男性向けの商品があるだけでも十分に目立つ。

もちろん、単に目立てばいいといった「あてずっぽうの発想」から仕掛けたわけではない。未婚女性の増加、晩婚化、キャリア女性の台頭など、世のなかを見れば女性がお金に関心を持つだけの「土台」が整いつつあった時代でもある。そこから女性心理の裏を読み、先を占い、販促企画につなげたのだ。

さて、肝心の「オリジナルの仮説」はどのようにつくるか。あえてデータ収集をしたり分析したりする必要はない。日ごろから消費者を、売り場を、そして世の中をしっかり観察していればおのずと浮かんでくるものだ。

消費者は常に何かを探して生きている。本屋を訪れたからといって本だけ読んで暮らしているわけでなく、ワイン売り場にきた人がワインだけ飲んで腹を満たしているわけでもない。よくいう「消費者目線が重要」とは、決して消費者の目線に立つことではない。

「あ、これ欲しかったかも!」
「この店、何かちょっと違った感じで気になる」

消費者の半歩先を行くことだ。この感覚は決してデータには現れないし、むしろデータに頼らない方がいい場合もある。

マーケティングに欠かせない「2つの想像力」

忙しいビジネスマンなら朝晩コンビニで食事を済ませる人もいるだろう。さて、ちょっと想像してほしい。

もしあらゆるコンビニが完璧にマニュアル化されていたなら、このビジネスマンは毎朝毎晩「Tポイントカードお持ちですか?」と聞かれるわけだ。そのうえ週末にのんびりしようと出かけたファミレスでも「Tポイントカードお持ちですか?」と聞かれたら、いったいどんな気分になるだろうか。しかも、彼はカードを持っていない。

店員にとっては1回の掛け声。でも、消費者のなかにはそれをストレスに感じる人もおり、買い物のたびにストレスを与える時点でNGだろう。もちろん、そうしたストレスはポイントやデータには現れない。では、データに現れないからといって見過ごしていいのだろうか。

消費者を惹きつける販促に必要なのが「想像力」なら、消費者にストレスを与えない気遣いもまた「想像力」。2つの想像力をバランスよく発揮すると企業の魅力はグンと高まる。

Tポイントカードお持ちですか?」
あなたは、どう思うだろうか。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

消費者に刺さるマーケティングリポートをオーダーメードで作成します――マーケティングを立て直す専門のコンサルティングです。詳しくは下記Webサイトをご覧ください。

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