「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

「IT企業で働いてます!」ってタイプがどうにも苦手

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先日、オウム真理教の死刑囚たちの刑が執行された。地下鉄サリン事件が起きたあの日、あの時刻、じつはボクも日比谷線に乗っているはずで、一歩間違えれば巻き込まれていたかもしれない――。

そんなことを考えながらTVニュースの過去の映像を眺め、ふと思ったのは「ずいぶんヨガのイメージも変わったな」という感慨だった。

当時のヨガといえば、怪しげな宗教が行う怪しげな行為というイメージが強かった。それはもっぱら麻原彰晃のせいだ。蓬髪を振り乱して無心に修行に励む姿は何とも異様であり、またヨガそのものが日本になかった運動であり「ヨガ=怪しいもの」というイメージが広がった。

ところが、である。今やすっかりヨガは健康的でオシャレな運動として若い女性中心に定着している。身体に与える効能が広く認知されたほか、女性誌などが打ち出したオシャレなイメージ戦略の影響も大きいのだろう。

怪しげな行為からオシャレな運動へ――。時代やライフスタイルの変化とともにイメージが変わるのは、自然なことである。

一方、いつまでも変わらないイメージもある。その1つが「IT」ではないだろうか。

ボクがITという言葉を初めて知ったのは90年代半ばだった。友人から聞いたときの反応は「何それ?」だった。というのも携帯やネットはまだ普及前、新聞でもまだ使われていない言葉のため「IT=オタク」というイメージを抱いた。

その後2000年代に入ると、無数のIT企業が誕生するITブームが沸き起こり、これをきっかけに人々は「IT」という言葉を知ることになった。今やITの導入こそあらゆる企業の経営上の命題となり、また一般の人々もスマホやネットを駆使している。もはやITという言葉を知らない方がレア、80歳のシニアですら知っている。

世の中にすっかり定着したIT。ただ、たいていの人はITを開発したり提供したりする側でなく、知らずのうちにITの恩恵を受けている立場、いわば「消費者」である。すなわちITは自分とは「無縁のもの」「難しいもの」と考えており、ITのイメージは90年代後半からあまり変わっていないように思われる。

それは日本企業やビジネスマンの動向にも現れている。事実、日本ではIT人材のじつに7割がIT企業に勤めるという。

ITに詳しい者はIT企業へ――。いつしかそんな流れができたようだが、それは不自然ではないかと思う。というのもメーカー・小売業・サービス業などあらゆる企業でIT化は進行しており、一般企業のなかにも多くのIT分野が存在し、それだけIT人材が活躍する部署もチャンスある。それなのに日本のIT人材はこぞってIT企業へ向かってしまう。

ちなみに海外ではIT人材がIT企業で働く比率は3割~5割程度に過ぎず、どうやら日本だけが突出してIT人材が偏って働いているらしい。

ITという言葉が世に広まってからおよそ20年――。IT人材の集中にはいろいろな課題も浮かんでいる。

その1つはITにかかる専門用語の使い過ぎだろう。普通の企業・普通の消費者を困らせるITビジネスマンは昔からよく見かけるし、今も減っていない。ITが分からないからIT企業に頼むのに、当の担当者は、理路整然とチンプンカンプンな専門用語で攻めてくる。こちらが分からないのが、分からないらしい。果たしてそんな担当者を優秀なITビジネスマンと呼ぶだろうか。

携帯ショップのカウンターで、店員の説明がちっとも分からないシニアをよく見かけるが、それでも契約を進めている。それは正常な商売だろうか。

相手が理解できる言葉で、相手の悩みを解決する――。これがビジネスの基本である。やたらと専門用語を駆使するビジネスマンはどの業界にも存在するが、とりわけIT企業でこうした傾向が強いのは、やはり7割というデータが示すようにIT人材が集中している弊害だろう。社内での専門用語が自分の標準語になっており、普通の企業・普通の人と対面してもとっさに直せないのだ。

あるいは、あえて相手が分からない専門用語を使うことで「自分を有利に見せよう」という人も見かけるが、何だかはしたない行為に映る。都民の99%が理解できない「アウフヘーベン」というドイツ語を平然と使う都知事に、いったい誰が好印象を抱くだろうか。

相手あってこそのビジネスである。優秀なIT人材ほど相手に合わせて言葉を選び、実際、ビジネスもきめ細やかなことが多く、そんな人は一般企業に勤めている場合が多いような気がする。「デバイス」という用語が分からない人はゴマンといるし、「コンテンツ」に首を傾げる人も大勢いる。相手がシニアなら、分かりやすいよう最初から「電子機器」と言ってあげれば親切だし、「情報の中身」の方がすんなり進むこともある。

先日、フリーランスになって20年近くが過ぎて初めてホームページをつくった。そこで思ったのは「ITってスゴイな...」というささやかな感動だった。コードなんて書いたことはない。自分でPCの設定もできない。かなりのIT弱者だった身にとって、これまで何の気なしに使っていたITがどれほど便利で優れたものなのか、人知れず汗を流してきたITビジネスマンの苦労を初めて知ったのだ。

だからこそ、ITのイメージ転換が必要なのではないかと思う。例えば、パンフレットを初心者向け・上級者向けで分けてつくるとか、企業特性に合わせて5つくらいの営業パターンを設けるとか、顧客企業がつまづきやすい事例はあらかじめパンフにまとめて配布するとか、そんな些細な工夫を施すだけでもイメージは大きく変わるに違いない。

IT企業に必要なことは何だろうか。技術はもちろんのこと、消費者は何に不便を覚えているのか、顧客企業は何に不満を感じているのか――。そんな悩みを的確に読み取ってサービスに転換する「マーケティング力」だろう。結局、相手は人間なのだ。

ボクはマーケティングのコンサルタントをしているが、ほとんど英語やカタカナ用語は使わない。「マーケティング=難解」というイメージは強く、そこで相手に苦労を強いてはいけないからだ。マーケティングもITと同じく、単にビジネスを有利に進める「ツール」に過ぎない。

ITが苦手な人はまだ多く、インドネシアの友人はいまだにYahoo!を「ヤホー」と呼んでいる。IT音痴にもほどがあるが、聞くたびに笑ってしまう。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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