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IBMが目指す「役に立つAI」

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相変わらず「AI脅威論」を唱える人は多く、「AIが人間にとって代わる」といったAIへの警戒心・不安はなかなか無くならないようです。そのような中、こんな記事が目に入りました。

人間の意図を正しく理解し答えを出せるAIが広まる
話し言葉を理解し、文献を読み込んで、必要な情報を導き出す

これを見て改めて思ったんですが、結局、人間がAIに求めているのは、こういうことなのですよね。人を助け、人のために働いてくれ、人が便利になるのであれば、他の多くのテクノロジー同様、多くの人にとっては大歓迎なはずです。AIを研究・開発している多くの人も、思いは同じでしょう。(まあ、中には世界征服を企んでいる人もいるのかも知れませんが)大事なのは、今の技術では何が可能で、何が不可能か、それが実現する可能性はあるのかをロジカルに判断することでしょう。この記事のように、人間の役に立つAIは着実にふえていますし、少なくとも今の所人間を脅かすところまではいっていません。

ai_man_akusyu.png今は第3次AIブームと言われますが、過去2回のブームの時にも、「AIが世界を征服する」みたいな話はあったのだそうです。SFでも定番ですよね。もちろん今はAIのレベルが上がっているために脅威と感じる人も増えるのでしょうが、今回はやはり、AIが万能であるかのように宣伝しすぎてしまったことが一因のような気がします。

IBMはこれまで「AI/人工知能」とは呼ばずに「コグニティブ(認知)」という用語を使っていました。私はこれは、IBMが過去の経験から、人類の敵のようなイメージを与えることを慎重に回避しようとしていたのではないかと思っています。なんといってもIBMは、AIの黎明期からAIに取り組んでいるのですから。最近ではまわりに押されてAIを使うようになったようです(さすがにこの状況では他社と同じ言葉を使わないと悪影響が出るようになってきたのではないでしょうか)が。。

仕組みがわからないから怖い

今、多くの人がAIに恐れを持つのは、AIの理解が「よくわからないけれども、凄そう」というあたりで留まっていることが原因なのかも知れません。仕組みがわからないと、その限界も可能性も適切に判断できないからです。例えて言えば、未開人が飛行機を見て「悪魔の仕業だ」とか騒ぐのと(実際にそんなことがあったのかどうかは知りませんが)同じようなことなのではないでしょうか。私たちは飛行機は物理法則に従って飛んでいる、ということを知っていますから、(その物理法則を詳しく説明できないとしても)飛行機が飛ぶのを悪魔の仕業とは思いません。AIの仕組みは確かに難しい(というか面倒くさい)ですが、中では単なる足し算とかけ算しかやっていないんだ、といったようなことがもっと知られれば、もう少し冷静な判断をできる人が増えるのではないでしょうか。

結局、Watsonは人間の代わりに何かを考えてくれるのでしょうか? そんなことはありません。例えて言えば、蒸気機関が登場して機関車ができたときに、「これを使えば海にもいけるし、空も飛べるだろう」と思うようなものではないでしょうか。海には行けましたが、空を飛ぶには全く別の技術が必要でした。さらにいくつもの技術革新が必要だったのです。今のAIも同じような状況なのでしょう。

「AIは人間を超えられない」という人は、「今の技術では無理だし、技術革新が起こるかどうかもわからない」という立場なのでしょうし、「AIは人間を超えるかも知れない」という人は、「今は無理かもしれないが、将来人間を超える『可能性』はゼロでは無いだろう」という立場なのでしょう。どちらも間違っているとは言えませんが、可能性(危険性?)ばかりを論じていても仕方がないような気がします。AIを怖いと言っても、AIが無くなるわけではありません。怖いと思って避けていると、事態はどんどん悪くなります。人間にとって役に立つ物だという認識に立って、どんどん使い倒してやろう、というくらいの気持ちで取り組まないといけないのではないかと思います。

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