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ブロックチェーンは本物か、偽物か

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ずいぶん前に、ブロックチェーンを礼賛する記事を書いたのですが、

ブロックチェーンの衝撃

その後、いろいろ実験的なプロジェクトは出てくるものの、世界を変えたと言えるほどの成果はまだ出ていないようです。4月にはこんな記事も出て、風向きが変わってきているのかなあ、と心配していました。

ブロックチェーンは、技術としても未来像としても残念なものである

原文は海外の方のようですが、「ブロックチェーンによる仕組みよりも、信頼・規範・組織からなる既存の仕組みのほうが、根本的に優れている」と言っておられます。

私なりの反論としては、「既存の仕組みは確かに優れているかも知れないが、その維持には膨大なコストがかかる。よりコストの低い代替手段があり、問題点を許容できる使い方や運用があるなら、それでも良いのではないか。」というものです。できるものから、ということですね。データベースの整合性に関する考え方は、NoSQL以降、ACID一辺倒からBASEでも良い分野はBASEで、という方向に変わっています。ブロックチェーンでも、同じような割り切りは可能では無いでしょうか。

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「可能性」を信じたい

インターネットは情報の流通を自由にし、コストをほぼゼロにすることに成功しました。ブロックチェーンは、信用に基づく価値の交換をほぼコストゼロで実現できるポテンシャルを持っていると考えています。情報の信頼性ということで言えば、インターネットは既存の報道・放送・出版には及ばないかもしれませんが、情報の取得コスト(と時間)がゼロになるというメリットはそれを凌駕していると思います。(もちろん、怪しい情報や偽記事を見極める能力もユーザーには求められるわけですが)誰かに「管理されていた」情報が自由に流通するようになったのです。ブロックチェーンが目指したのも、「誰かが管理していた価値の流通を自由化する」ということであり、これは「自由」「分散」というインターネットの理念とも共通します。私がブロックチェーンに可能性を感じ、なんとかうまく行って欲しいと思っているのは、これが理由です。

問題は存在するが、制御可能

確かに、ブロックチェーンを生み出したビットコインをはじめとする仮想通貨が、投機の対象となって乱高下を繰り返し、取引所が侵害されるなど、悪いイメージばかりが先行しているのは事実です。しかしこれらは、言ってみれば大豆やトウモロコシなどが投機の対象になっているのと同じで、大豆やトウモロコシ自体に問題も責任もありません。取引所からの通貨流出についても、銀行の支店の戸締まりが疎かになっていてそこに泥棒が入ったようなものです。仮想通貨の仕組みそのものに問題があるわけではなく、安全対策や運用が未熟だったということで、この辺は今後当局の規制が強化されて行くでしょう。(過度な規制強化には反対ですが、これだけ不祥事が続くと、ある程度はやむを得ないでしょう)

一方で、ブロックチェーンの仕組みそのものにも改善の余地があることも確かです。ビットコインのPoWには元々10分程度かかるため、リアルタイムのトランザクションでは使えないことは指摘されていましたが、トランザクションが増えていた時期はPoWにかかる時間がどんどん長くなっているということですし、送金コストも銀行並みに上がっていた(今は下がり気味のようです)ということです。それどころか、そもそもビットコインにおいて完全な合意形成ができているのかという疑問も呈されています。

ブロックチェーンの「合意」の意味を、我々は合意できているのか?(下)

ただ、これらの問題点は徐々に解決されてきており、新たな技術も急ピッチで開発されています。問題が残っているところも運用などでカバーするなどして、実際の適用例も増えています。改めて見渡してみると、ネガティブな意見も増えてきてはいますが、現在でもポジティブな意見の方が多いという状況に変わりはありません。

動き出したAmazon

その中で、これまでブロックチェーンについて明確な態度を示してこなかったAmazonが動きました。

Amazonからブロックチェーン・アズ・ア・サービス――BaaSのライバルはOracleとIBM

ブロックチェーンについては、大手のITベンダーの中で一番最初に食いついたのがIBMだったと思いますが、すぐにMicrosoftが追従しています。しかし、AmazonやGoogleは特に大きな発表は行っていませんでした。Amazonは

アマゾンウェブサービスCEO「ブロックチェーン使ったサービス提供する予定ない」

と言い、Appleに至っては「興味無し」とまで言っていたようです。

AppleやAmazon「ブロックチェーンに興味なし」 本腰入れているのはMSだけ?

今回、Amazonが正式なサービスを開始したことは、ブロックチェーンへの信頼を勝ち取る上で大きな一歩のように思えます。

Googleについても動きが伝えられています。

グーグル、独自のブロックチェーン関連技術を開発中か

米グーグル、独自のブロックチェーン技術に取り組む-関係者

これは、Googleの正式発表では無くて、内部リークのようですが、企業買収までしているということですので、本気度はかなり高そうです。

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