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MacがARMを採用する理由

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ここへきて、AppleがMacintoshのCPUをIntelからARMに変更しようとしている、という話がまたささやかれ始めました。

アップルが描く「インテルなき未来」と、見えてきたいくつもの課題

Wiredが書いているように、この話(IntelからARMへの乗り換え)自体は別に目新しいものではなく、ここ数年あちこちで燻ってきたことです。Wiredは、「インテルとの別離においては面倒な問題がいくつもある」と書いており、アプリの互換性の問題を挙げていますが、私は、それでもAppleはやるだろうと思います。なぜなら、

Macはこれまでに何度もプロセッサを変えている

からです。初期のMac(1984年~)はMotorolaの68000系、その後IBMのPowerPC(1996年~)に変わり、2006年からIntelベースになっています。Wiredは「インテルとの10年以上もの"蜜月"」といいますが、68000もPowerPCも10-12年くらいで乗り換えていますから、別段不思議ではないですね。CPUを変えればバイナリ互換性は失われます。エミュレーション環境なども提供されましたが、あまり使い物にはならなかった記憶があります。また、32ビットから64ビットへの移行時やOS 9からOS Xへの移行時もアプリの互換性に大きな影響を与えましたが、Jobsは断行しました。

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もちろん、昔と今とではMacのシェアも影響度も違いますし、なによりJobsが居ませんから、どうなるかわからない部分もあります。(AppleユーザーはJobsが言うことは何でも聞きましたから ^^;)

ただ、今でもMacOSのバージョンアップがあると動かなくなるソフトがちらほらありますし、iOSも昨年完全に64ビットに移行して32ビットアプリは軒並み動かなくなりました。基本的には「必要ならばやる」というのがJobsの遺伝子であり、Appleの基本姿勢ではないかと思います。64ビットに移行しても32ビットアプリとの互換性を極力守ろうとしているMicrosoftとは、このへんが大きく違います。ARM上でもWin32バイナリを動かそうとしていますし。(UIは変えるくせに互換性は守るMicrosoftと、UIは変えないが互換性に難があるAppleという対比は面白いですね)

ARMは「遅い」のか?

Wiredの記事では、「ARMアーキテクチャーの「力不足」」も問題になるとして、「計算能力という点で見れば(インテルのエントリーモデルの)『Core i3』か『Core i5』のローエンドモデル程度でしょう」というコンサルタントの声を紹介していますが、iPhoneX/8用のA11 Bionicについては、一世代前のCore i7に迫る性能を出している、と紹介しているサイトもあります。

Apple最新のSoC「A11 Bionic」の性能が強すぎる...という話

いずれにせよ、Appleが目指しているのはサーバー向けの演算能力バリバリのチップでは無く、AIやグラフィックス処理などを複合した使い方を高速化していくという方向性でしょうから、単なる計算能力の比較ではわかないということかも知れません。

それに、いざとなればAppleはARMを独自に拡張したり、ARMと共同開発して高速化を図ることもできるでしょう。なんといっても、AppleはARMの設立に関わっており、浅からぬ因縁があります。当時のAppleが開発中だった「Newton」用のCPUとして、高性能で低消費電力のCPUを共同開発したと言われています。

技術的最先端を維持するためにはハードとソフトを一体で開発する必要がある

AppleがMacのCPUをARMベースにするというのは、CPUですらもコントロール下に置きたいからでしょう。IntelのCPUは高性能ですが、Appleの自由にはなりません。AppleはiPhone4用のA4プロセッサからARMベースでCPUの自社設計を開始しましたが、それは、他のスマホよりも早く、様々な新機能を実現したかったからです。他社が作るCPUをベースにしていては、競合を出し抜くことはできません。iPhone4のA4ではRetinaディスプレイのサポートと省電力化、iPhone5sのA7では他社に先駆けて64ビット対応を果たし、そしてiPhone X/8で採用された最新のA11 Bionicでは、これも他社に先駆けてAI用のNeural engineを搭載しました。CPUをも含むハードウェアとOSをはじめとするソフトウェアを一体開発し、それを高品質なサービスとして提供するのがAppleの「勝ちパターン」となっているのです。

Appleは、これをMacでもやりたいのでしょう。もちろん、おなじARMベースになれば、iOSとのアプリの互換性もとることができます。

OS/アプリのあり方が変わる

先日、ITソリューション塾でMicrosoft CSOの河野さんに講義をしていただいたのですが、その中に「もうOSはいらない」という話が出てきて、びっくりしました。この話はいずれ書きたいと思っていますが、今後OSの役割は大きく変わる、今までと同じ形では残らないだろう、ということだそうです。OSに対する考え方自身が、大きく変わろうとしています。

そして、クラウドの普及によって産まれてきたWebサービス/Webアプリから見れば、CPUやOSの違いは何の意味も持ちません。また先日書いた不揮発性メインメモリも、アプリケーションのあり方を大きく変えようとしています。これまでの延長線上でOSやアプリ、互換性などを論じるのは意味が無くなっていくということでしょう。

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