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ARM 版 Windows10 に特許侵害の恐れ ?

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「なるほど、そう来ましたか」というのが第一印象でした。

Intel、「x86のエミュレーションは特許侵害」とARM版Windows 10に牽制

しかし、このタイトルは釣りっぽいですね ^^; サブタイトルには「特許侵害の恐れがあると、誰にともなく警告した。」とあり、なんとも腰の据わらないお話です。

以前のエントリで書いたように、MicrosoftがQualcommとCaviumと組んでWindwos10をARMに載せるという計画を発表し、そのときにWin32のエミュレーションによってIntel用のバイナリも動くようにする、と言っていた件についてです。Intelとしては、これまで独占してきた領域にARMが入り込んでくるということは、当然看過できないですよね。しかし一方で、Microsoftとの関係は悪くしたくない、という苦しい事情が、腰の据わらない対応になったというところでしょうか。今回、QualcommがComputexでWindows10ノートを発表したことに反応したようですが、この話は昨年すでに発表されており、何で今? という違和感もあります。

今回はちょっと及び腰な感じですが、Intelは過去、互換CPUメーカーを訴えて潰しまくってきた経緯がありますから、脅しとばかりも言っていられません。ただ、調べてみたらCylixTransmetaも、Intelとの訴訟に負けて潰れたわけでは無いのですね。最終的には和解してクロスライセンス、ということになっているようで、しかもIntelがライセンス料払ってます ^^; AMDとも和解 (これもIntelが支払い) しています。うーん、結局訴えてはみても、最終的に勝ったことはないってことでしょうか。半導体業界って、お互いに特許を持ち合っているので、一方的に勝つ、ということは難しいのかも知れません。

記事には「MicrosoftもQualcommも、どのような技術でそれを実現しているのかについては公にしていない。」とあるので、いずれにせよ、Intelとしても今の所はどうにもできないのでしょう。これを受けて、MicrosoftなりQualcommなりが「当社の技術はIntelの特許を侵害してはいない」と声明して具体的な技術を公開すれば、Intelは黙るのでしょう。逆にMicrosoftなりQualcommなりが「ヤバい」と思えば、水面下で示談交渉が始まるのかもしれません。反応を見るためにIntelが放ったジャブ、というところでしょうか。

Intel Fires Warning Shot At Qualcomm And Microsoft Over Windows 10 ARM Emulation In X86 Birthday Blog Post

この記事の中に "the company today took the opportunity to get a bit passive-aggressive" とあります。いろいろ回りくどいですね。。"passive-aggressive" なんて単語知りませんでしたが、「受動的攻撃行動」と訳すのだそうです。日本語の方も知りませんでした ^^; "the company" はIntelのことですから、「Intelは今日、ちょっとした受動的攻撃行動に出た。」くらいな感じでしょうか。やはりわかりにくい。

"passive-aggressive" で検索していたら、こんなページがありました。アメリカでは普通に使われる言葉で、誰かへの怒りや不満を表現するために、意図的にメールへの返信をしなかったり、引き延ばしたりたりする、といったことを指すようです。もともとわかりにい行動を指す言葉なので、わかりにくいのは仕方ないのでしょう。しかし今にして思うと、外資で働いているときにはこういうアメリカ人がいましたねえ。当時は「忘れっぽい奴だ」「真面目に仕事せんかい」と思っていたわけですが、意外に他に理由があったのかも知れません。アメリカ人とコミュニケーションする場合、こういうことを頭に入れておくと良いかもしれませんね。

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