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【2兆円】 任天堂“2年で売上2倍”を考える~おばちゃん、それじゃ「脳トレ」は使えないってば

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 8月末、任天堂は2009年3月期の業績予想を上方修正し、売上高が【2兆円】になる見通しを発表しています。2007年3月期の連結売上高9,665億円が、2009年3月期には2兆円に。そもそも売上が2倍になるだけでもすごいことなのに、1兆円が2兆円になるってのは半端な話じゃありません。なぜこれほどの驚異的な成長が実現できたのでしょうか。

 売上構成は大変シンプルで、主力商品はDS・Wiiと、そのソフトです。家庭用ゲーム機の市場では、任天堂・SONY・Microsoftの3社が熾烈な競争を繰り広げてきましたが、ここ2年は任天堂の圧勝。当たり前の話ですが、新型ゲーム機を発売したところで、単なる買い替え需要だけで売上倍増は考えられません。じゃぁ、DSは、Wiiは、これまでのゲーム機と何がどう違うのでしょうか。コレは、過去さんざん語られてきた話でしょうから、私がここで語れることはたいしてありません。ただ私自身、任天堂のすごさを思い知った体験がありますので、今回はそれを紹介しましょう。

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 3年ほど前でしょうか。あるおばちゃんが、DSの超人気ソフト「脳トレ」を買った時のことです。おばちゃんといっても、知人の母親ですから、60歳過ぎくらいでしょうか。おばちゃんはある日、テレビで「脳トレ」がすごい人気だと知り、ボケ防止にもってこいだと思ったらしく、近所のスーパーのゲーム売場に買いに出かけたそうです。ところが、あいにくの品切れ状態。品切れだと聞いて、おばちゃんはどうしても欲しくなり、速攻注文したそうです。待つこと約1ヶ月。この間、おばちゃんのお約束でしょうか、催促の電話を数回。待ちに待って、やっと入荷の電話をもらい、店に出かけて買ってきました。

 家に戻って早速、さぁやるぞ~って感じで開封したものの、さて、使い方がわからない。小さなカセットを見つめて、途方に暮れてしまったそうです。おばちゃんには息子さんが2人いるんですが、2人とも大人になってすでに独立し、今はおじちゃんとおばちゃんの2人暮らしです。だから使い方を教えてもらおうと思っても、聞く人がいない。仕方なく、ふたたび自転車をとばしてスーパーへ。そこで、店員さんとこんなやりとりがあったそうです(若干、脚色付きです)。

 おばちゃん:「ちょっと、コレ、どうやって使うのよ」
 店員さん :「お客様、説明書はお読みになられましたか~」
 おばちゃん:「読んだわよ~。まずカセットを差し込んで、って、どこに差し込むのよ。
         
電源を入れて、って、スイッチはどこよ~」
 店員さん :「ですから、、、DSの本体に、、、えっ?」
 おばちゃん:「…?…DS?…本体って、、、ん…?…」

 おばちゃんがゲームソフトを買ったのは、コレが生まれて初めてのこと。「脳トレ」がやりたいから、「脳トレ」を注文した。そう、おばちゃんは100%正しいのです。でも、残念なことに、「脳トレ」をやるには、DS本体が必要だということを知らなかった。この話を聞いたとき、私は心の底から、DSってすごいと思いました。ゲームのことなんか何も知らないおばちゃんが、ゲームソフトを買ってしまったわけです。つまり、これまでゲームとは無縁だったおばちゃんが、ゲーム購入者になってしまった。ひょっとすると、これに近い話が、全国津々浦々でおこっているのではないか…。

 言うまでもなく、おばちゃんはDSをその場で購入。その後「英語漬け」なども購入し、今じゃ立派なDSユーザーだそうです。

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 この2・3年の間に、全国で、いや、ひょっとすると全世界で、こんなおばちゃんが大量に生まれたんだろうなと思います。DSに限らず、Wiiも同じでしょう。ゲームとは対極にあるスポーツを取り込み、女性ユーザーに大ヒット。「メタボにWii」というブームまでつくってしまいました。つまり、任天堂の売上2兆円は、女性・高年齢層という、今までゲームとはまったく無縁だったマーケットを開拓したことによるものです。おばちゃんが、おかあさんが、おねえちゃんが買いたいような商品を出したから、売れたのです。だから、1兆円→2兆円なのです。

 ゲーム機にせよ、PCにせよ、IT機器は新製品が出ると、とかく技術やスペックで語られがちな所があります。でも、ユーザーに受け入れられるために本当に大事なことは何なのかを考えたとき、見方は少し変わります。技術が高ければ売れる、そんな簡単なものではないのです。というより、技術は手段でしかないと気づかなければいけない。それは、おばちゃんが証明してくれてます。ですよね。。。

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