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「用心するに越したことはない」という思考停止

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かつて(と言ってもつい最近まで続いていた話ですが)、MMR(新三種混合)ワクチンが自閉症を引き起こすという説が唱えられたことがありました。しかしこの説の元となった研究はまったくの事実無根。データは捏造されたものであり、研究論文も撤回されてます。様々なところで取り上げられていた問題ですので、ご存知の方も多いと思いますが、経緯がまとめられている記事をご紹介しておきましょう:

記事 : 再々掲載:MMRワクチンは自閉症の原因では無い (科学ニュースあらかると)

今回ランセットという権威ある学術誌に掲載され「MMRワクチンが自閉症の 原因になっている可能性がある」という説の根拠とされていた論文が、 「研究倫理に反するデータの扱いが行われていた」などの理由で 掲載を取り消されましたので、その後の検証としてわかりやすいこの記事を 再度掲載しておきます。

MMRの接種率が低下した結果「生のウイルス」に感染して死亡した乳幼児の命は、決して取り戻せません。それを忘れないでください。

引用箇所でも指摘されているように、この一件が問題なのは偽研究が権威あるメディアで紹介されたという点ではなく(もちろんこの点も見逃すことはできませんが)、デマによって予防接種を受けさせる親が減り、病気になる子供が増えたという点です。「MMRワクチンによって自閉症になるかもしれない」という情報を流した人やメディアの中には、必ずしも悪意があったわけではなく、単に「用心するに越したことはない」という姿勢であった方々も多いでしょう。しかし結果として、その姿勢が悲劇に荷担してしまったわけです。

今回の東日本大震災においても、オンライン/オフライン上を様々な未確認情報が飛び交っており、それらが「何かあってからでは遅いから」という理由で取り急ぎ転送されるというケースが多々見られます。これがお酒のコマーシャルであれば、「ああ良かった、病気になった子供はいないんだ」で済むでしょう。しかし実際には、誤った情報によって取られてはならない行動が取られてしまう場合があるのです。そしてそれを覆すために、あるいは事実無根の批判に対応するために、さらに余分な時間と労力が消費されることになります。

グレーゾーンにある情報を流すな、とは言いません。しかし「用心するに越したことはないから」という理由で後先考えずに転送してしまうことは、ある意味で思考停止ではないでしょうか。そして「結果的に何も起きなかったけど、大騒ぎした僕が恥をかいただけだから良いよね」では済まされない事態が起こ得るのだということを認識した上で、こうした情報を伝えて行くべきだと思います。

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