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スマートグリッドのお値段、15兆円なり。

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実は昨日ご紹介した記事の中でも触れられていたので、既にご存知の方も多いと思いますが、米国の電力中央研究所(Electric Power Research Institute, EPRI)がスマートグリッド(米国内)の敷設に必要となるコストを試算、発表しています。その額、今後20年間で1,650億ドル(約15兆円)とのこと:

Sticker Shock: EPRI Says Smart Grid Will Cost $165 Billion Over 20 Years (SmartGridNews.com)

米国では電力自由化の影響もあり、電力会社による設備投資が抑制されていた関係で、電力インフラの老朽化が進んでいます。高度な設備を導入する以前に、そうしたインフラのリプレースが必要なこと、また国土の広さを思えば15兆円という額も驚きではありませんが、単純計算で1年に80億ドル(約7,200億円)がかかるというのは精神的なインパクトが大きいはず(ちなみに2011年度の米国家予算の中で、宇宙開発に割り当てられているのは約49億ドルしかありません)。まさしく、

That $165 billion price tag has caused quite a stir among stakeholders as well as consumer groups.

They wonder who's paying for it.

この1,650億ドルという値札は、関係者や市民団体の間に激しい議論を巻き起こしている。

「いったい誰が払うのだ?」というわけだ。

という状況でしょう。

もちろんこの15兆円というコストの中には、生活インフラとして欠かせない部分もあれば、「あれば嬉しい」的な先進的機能も含まれているはずです。事業仕分けではありませんが、今後は「どこまで必要なのか、そのコストは誰がどう負担するか」といった議論が深まっていくのではないでしょうか。以前も書きましたが、そうした議論が起きるのは決してスマートグリッドにとってマイナスではなく、むしろ事態が進展している証となるはず。一時は後退・停滞しているように見える状況になったとしても、本当の意味で現実的なスマートグリッド像というものが次第に明らかになっていくのではないかと思います。

【○年前の今日の記事】

ケータイが文化の多様性を守る? (2009年2月16日)
"Amazon S3"という発電所の停止 (2008年2月16日)
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