オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

仕事しない、という仕事術

»

なぜ、週4時間働くだけでお金持ちになれるのか?』(原題"The 4-Hour Workweek: Escape 9-5, Live Anywhere and Join The New Rich)を読了。この本については関連ブログ(http://fourhourworkweek.com/blog/)の方を先に知ったのですが、シリコンバレーで人気を博しているとのことで、日本語版を買ってきて読んでみた次第。予想に反して(?)、中身は至って真面目な「発想転換のススメ」でした。

タイトルだけ読むと、「仕事しないでラクに儲ける方法」的な内容を想像するかもしれません。しかし、この本が訴えているのは「目的を達成するために働く」という姿勢を持つこと。何はともあれ仕事、と考えるのではなく、何をしたいかから逆算して考えようという発想です。著者のティモシー・フェリス氏の言葉で言えば、

働くために働くことは避ける。最大効果が得られる最小必要量だけ働く

ということになります。決して、働かないで稼ごうなどという安易な発想ではありません。

ともすれば、24時間365日忙しくしていることが美徳とされてしまいます。しかし、例えば年収が600万円あれば十分な人が、3000万円稼ぐために休み無く働くというのは合理的でしょうか。もちろん、「将来に備えて」「働いていないと職を失う」といった理由はあるでしょう。しかし、その不安は合理的なものなのか(単なる思いこみでは?)、不安から不必要な仕事まで手がけていないか(せっかくいつもより1時間早く帰れそうなのに、1時間あるからと余計な仕事をしていないか?)チェックしてみてはどうかとフェリス氏は説きます。根拠のない不安で働き続けるなら、時間をつくって本当にやりたいことにチャレンジした方が豊かな人生なのでは――それがこの本で使われている「ニューリッチ(New Rich)」の意味です(※個人的に邦題には「お金持ち」という言葉を使うべきではなかったのではと感じています)。

もちろん、働くというのは尊いことであるべきだと思います。しかし現在は、それがゆがんだ形で解釈されてしまっているのではないでしょうか。その極端な例が「オフィスには午前9時に来て、少なくとも午後5時まではいるべき」という発想です。これだけモバイル機器が進歩した世の中なら、在宅でできる仕事がかなりあるにも関わらず、なぜか「朝から家で仕事するなんてダメだ」という意見が根強いですよね。またキチンと仕事を終わらせて有給休暇や育児休暇を取っているのに、なんとなくうしろめたく感じる・取っている人を批判するというのも「オフィスで忙しくしているのが仕事」という幻想から生まれたものでしょう。そう考えると、「働くのは尊い」という価値観を固持し過ぎるのも問題ではないでしょうか。

フェリス氏が個人的な目標から逆算してたどり着いたのが、週4時間しか働かないというライフスタイルです。つまり彼は4時間以上働きたくない、のではなく、週4時間働けば自分のやりたい事ができるという仕組みを作り上げたわけですね。そのためにはどうすれば良いか、すなわち「仕事しない仕事術」を解説するのがこの本のメインなわけですが、正直言ってマネするのが難しい部分もかなり含まれています。しかし、あらゆるビジネス書に共通する話ですが、表面的な具体例をマネしたところで上手くいくわけではありません。その背後にある思想、DNAといったものを学んで自分なりにアレンジするという態度が必要でしょう。その意味で、自分の仕事に応用できるアドバイスが豊富に詰められていると感じました。

……と、ここまで読んでも「やっぱり週4時間しか働かないことを勧める本なんてなぁ」と思われた方は、巻末に掲載されている「難病のためにニューヨークの病院に入院している少女からプレゼントしてもらった詩」だけでも読んでみることをお勧めします。この詩のタイトル「スローダンス」の方が、本書のタイトルとしては適切かもしれません。

Comment(2)