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遊びの要素

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先日からこのブログでも触れていますが、先週土曜日に「第4回社内ブログ/SNS研究会」を開催致しました。詳しいレポートはこれから公式ブログにアップされるものをお読みいただくとして、僕が1つ感じたことは、社内ブログ/SNSというシステムで「遊びの要素」が果たす役割の重要性です。

今回の研究会は、あちこちで「遊び心」を見つけることができました。例えばサイボウズの丹野さんが自作のSNSで実現された、「へぇボタン」という機能があります。これは投稿された記事を評価する機能の1つで、記事を読んで「へぇ~」と感心した時に画面に表示されている「へぇボタン」(名前は某民放TV番組から取られたもの)を押すと、「へぇ」が1票投じられるというもの。こうして皆が感心した記事には多数の「へぇ」が集まり、優れた内容の記事が把握できるというわけです。

研究会でご講演いただいた日本IBMシステムズ・エンジニアリング株式会社の大川さんはこの「へぇボタン」を社内ブログに移植された際に、ボタンを押すと「へぇ」という声が出るようにしたのだとか。これで社内が某番組のように「へぇ~へぇ~」という声で溢れる・・・ことはないそうですが、まさしく遊び心といったところでしょう。また研究会ではこれ以外にも、「星座占い機能をつける」「姓名判断機能を付け、プロフィール欄に表示する」などのアイデアが出されていました。

こうした機能は、従来の企業内システムであれば考えられなかったことだと思います(少なくとも「へぇボタン」を実装したERPが登場したなどという話は聞いたことがありません)。従って「こんなお遊びなんか」と眉をひそめられてしまうかもしれませんが、遊びの要素があることによって、ユーザーを「傍観者」から「参加者」へと変えることが自然に行えます。「へぇボタン」はまさに遊びの中から「集合知」を生み出す仕組みですし、社員データベースで姓名判断が見れたとしたら、他人のプロフィールを見る人が増えて社員同士の交流促進につながるでしょう。少なくとも「何か面白そうだ」と思ってアクセスする人は増えるはずです。

社内ブログ/SNSや、いわゆる Web 2.0 系のアプリケーションにおいては、「参加」が何よりも欠かせない要素です。しかしその多くは基幹業務に直接関係していないので、放っておいただけでは参加を期待することはできません。参加を強制するのも1つの手段ですが、その場合は生み出されるコンテンツの質の低下や、強制されることに対する報酬(ブログを書いた時間は業務として給与支払いの対象となるか?etc.)など、別の問題を生んでしまうでしょう。従ってユーザーの自発的な参加を促すしかないのですが、その際に役立つのが「システムが持つ遊び心」なのだと思います。

もちろん「遊び」一辺倒になってしまい、それが参加の目的になってしまう(例えば「へぇ」の数を競うためにセンセーショナルな記事を投稿するなど)ことは本末転倒ですが。しかし遊びの要素で参加を促し、参加が価値を生んでいくことを通じて、今度は本来の目的である価値を求めて参加するという姿勢を生み出すことができると思います。その意味で、「遊び」と「本来の価値」を切り離したり、どちらかを軽視するのではなく、両者を同時に考えていくことが必要なのではないでしょうか。

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