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「ゴールに近いサービス」の提供

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人材サービスのインテリジェンスが、企業の中途採用業務を支援するシステムの無料提供を計画中だそうです:

中途採用、ネットで管理 -- インテリジェンス 無料システム(日本経済新聞 2006年6月13日 第15面)

簡単にポイントをまとめておくと、

  • インテリジェンスが今年9月をめどに、企業が自社の中途採用業務をネットで一括管理できるシステムを無料で提供する。
  • 利用できるのはインテリジェンスの人材紹介や転職サイトの顧客企業。
  • 企業はこのシステムを通じ、応募者の個人情報、採用活動の進捗状況などを管理できる。職種別採用状況の一覧や、選考結果検索なども可能。
  • インテリジェンス以外の人材紹介会社や転職サイト経由の応募者のデータ管理も可能。

こんなところです。他社経由の応募者データも管理できるということですから、採用データを一括管理したい企業にとっては便利なサービスでしょう。また実物がどのようなものになるか分かりませんが、人材サービス大手のインテリジェンスですから、採用状況管理については詳細なノウハウがあるはずです。それが反映されたシステムになっていれば、ベスト・プラクティスに触れられるという意味でも、企業にとって価値のあるサービスとなるのではないでしょうか。

以前「自社が提供しているサービスは通過点に過ぎない」と意識することの重要性について書きましたが(参考記事:「通過点」という認識)、人材紹介というサービスも一種の通過点を提供しているに過ぎません。企業にとっては、紹介された人材が優秀だと証明され、採用が完了して初めて「ゴール」となるわけです。今回提供されるシステムは、そのゴールに向けて企業が行う活動をサポートするものであり、インテリジェンスの決断は極めて自然な流れと言えるのではないでしょうか。

問題はこのシステムからどのように利益を得るかという点ですが、僕は無料で解放したことは正しい決断だと思います。有償で提供する、という選択肢があったかもしれませんが、この種のシステムは一度使い出したら乗り換えられる可能性が低いものでしょう(リクナビが同様のシステムをリリースしたとしても、よっぽど大きな利益が目に見えなければ、企業がデータを移行する手間をかけるとは思えません)。従って先にサービスを普及させることに価値があります。その意味では、インテリジェンスは自社サービスの顧客企業だけに限定するのではなく、あらゆる企業に開放するという決断を行っても良かったと思います。

このサービスを通じて、インテリジェンスはユーザー企業との恒常的な接点を持つことになり、一種の営業窓口としてシステムを利用できるでしょう。またシステムを通じて企業の採用活動を把握できるようになれば、データからナレッジを抽出したり、それを企業にフィードバックするなどのコンサルティング活動も可能になると思います。つまり「優秀な人材を採用する」というゴールにより近い位置で、付加価値の高い(従って対価を請求することができる)サービスを提供することが可能になるのではないでしょうか。

人材紹介サービスに詳しいわけではないのですが、個人がWEBを通じて自己アピールを行え、企業との接点を簡単に持つことができる時代には、単に候補者を探してくるだけのサービスは価値を失ってしまうでしょう。従って「よりゴールに近い位置にあるサービス」の提供は、人材紹介サービスを行う企業にとって避けられない方向性のはずです。今回のインテリジェンスの決断は、その具体的な行動として評価できるのではないかと思います。

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