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書くことによる「癒し」

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なぜブログを書くのでしょうか。情報発信のため、気になった事柄をメモするため、日常生活を記すため。人それぞれに様々な理由があって良いと思いますが、「書くことで癒される」という目的もあるでしょう。

「ブログによる癒し」というのは僕が言い出したことではなくて、コミュニケーションを研究されている方々も指摘している効果です。また過去のITmediaニュースに、こんな記事がありました:

ブログの目的は言論よりも癒し――AOL意識調査(ITmedia News)

アメリカで行われた調査ですが、これによれば

ブログを書く目的は「自分の考えや感情を人に伝えたい」(54%)、「自分の生活と関心事を記録しておきたい」(43%)などが多数を占めた半面、ジャーナリズムへの関心を挙げたのは16%、最新ニュースやゴシップへの関心は12%、政治評論は8%にとどまった。

とのこと。「自分の考えや感情を人に伝えるためのブログ=癒されるためのブログ」というロジックから「ブログの目的は言論よりも癒し」というタイトルになっているわけですが、実際に癒されるかどうかは別として、自分のことを知って欲しい、だからブログを書くという人が半数近くにも上るという結果が出ています。ブロガーの増加傾向にますます拍車がかかっていることを考えれば、人々は何らかの癒しの効果をブログに感じていると言えるのではないでしょうか。

一方、昨日の日経新聞に、ある小さな記事が載っていました:

テレビ電話で「傾聴」サービス -- NTTなど高齢者向け(日本経済新聞 2006年4月19日朝刊 第13面)

NTTなど4社が協力して、「遠隔傾聴サービス」の試験運用を開始したというニュース。WEB版の記事によれば、「傾聴」とは「主にボランティアが高齢者の話の聞き役となり、不安や悩みの軽減を目指す活動」とのこと。その傾聴をテレビ電話の技術を利用して、遠隔で実施しようという試みです。テレビ電話ならではの工夫として、登録した思い出の写真やビデオを双方の画面に表示し、話が膨らみやすいようにしているとのこと。

これを読むと、「遠隔傾聴サービス」もブログも「他人に自分の話を聞いてもらうことによる癒し」を目的としている点で共通しています。であれば、高齢者にブログを書いてもらうことで「癒し」をもたらそうという試みがあっても良いのではないでしょうか。もちろん複雑なPC操作を高齢者がすぐに覚えてくれることは想像できませんが、何らかの入力補助の工夫があれば、ブログを始めてもらうことは不可能ではないと思います(情報アーキテクチャやユニバーサルデザインを考えている人々にとって、真価が問われる分野になることでしょう)。

相手がいなければできない「傾聴」と違い、ブログはいつでも、一人でも行うことができます。「アクセスやコメント等のレスポンスがなければ効果がないんじゃないの?」という懸念もあると思いますが、多くの人が癒しを求めてブログしていることを考えると、単に「書き記しておけば誰かが読んでくれるかもしれない」という思いだけで効果があるのではないでしょうか。また定期的に高齢者のブログを巡回して、コメントを付けてあげるというボランティア的な役割の人物を置いても良いでしょう。いずれにせよ、「高齢者の癒し」というテーマに対して、ブログが何らかの形で貢献できるように思います。

このシロクマ日報の最初のエントリで、トマト栽培について世界中から質問を受けている92歳のブロガーがアメリカにいらっしゃることを紹介しましたが、実は書くことで彼も「癒し」という恩恵を受けているのかもしれません。であれば、「高齢者ブログ」は読み手にとっても、書き手にとっても価値のあることではないでしょうか。

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