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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

研修効果の定着を実現する要所

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『7日=77%』。

この数字が示す現象をみなさまはご存知でしょうか。

この数字は"人の記憶"に関する実験を通じて立証されたデータで、「人の記憶は7日後におよそ77%忘れられてしまう」という結果を現したものです。

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研修実施に関するご相談をいただく企業様から、以下のようなお悩みをお伺いするケースがあります。

  • 「研修効果がなかなか定着しない。」
  • 「研修を受けて1週間くらいは盛り上がっているが、効果が持続しない。」
  • 「どうすればいいでしょうか?」

それもそのはずです。
人は、7日後に77%の情報を忘れてしまうのですから。

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では、せっかくのコストを投じて行った研修効果を、より一層定着させるには、どのような対策を講じるのが良いのでしょうか。

一つ目に挙げられるのが、「学習内容の復習」です。
学習した内容を1週間後に復習すると、学習後2週間時点の定着率が20%向上するという事も立証されています。

そういった狙いで、学習の1週間後に受講者へアンケート(テスト)を配信し、回答を集め、学習効果の定着度と研修内容の評価を行う取り組みは随所で実施されています。

しかし、それだけでは研修投資の回収という点で、まだまだ不充分であると言わざるを得ません。

では、研修効果の更なる定着度向上を見据えた際、他にどのような取り組みが考えられるでしょうか。

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ここで一つ考えなければならないのが「研修効果の定着度には個人差がある」という事です。

「人はみな、研修の1週間後に教わった事の77%を忘れている。」というのが平均数字です。

しかし、その反面、1週間後~2週間後~1か月後~3か月後・・・と、研修受講を一つのきっかけにメキメキと力を伸ばす社員も存在するのは事実です。

では、この差はどこから生まれるのでしょうか?
記憶力の差なのでしょうか?

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ここでもう一つ面白い研究結果をご紹介します。

■ガニエの9教授事象

1、 学習者の注意を喚起する

2、 学習者に目標を知らせる

3、 前提条件を思い出させる

4、 新しい事項を提示する

5、 学習の指針を与える

6、 練習の機会をつくる

7、 フィードバックを与える

8、 学習成果を評価する

9、 保持と転移を高める

引用:ガニエの9教授事象/[ロバート.M.ガニエ氏/フロリダ州立大学名誉教授]

上記は、「人がどのように新たな知識を習得するか」を分析し、授業の指導方法や教材の内容について検討された研究成果の中で発信された情報で、「人の学びを促進するために有効な外圧のかけ方」について整理されたものです。

この9つの原則は研修プログラムの設計を進める上で、とても役に立つ内容です。

上記に沿って、研修プログラムを設計し、受講後のフォロー(実務アサイン等の環境整備も含め)を行う事で研修効果は目に見えて向上します。

しかしながら、この9つの原則を全て遵守しようとすれば、教育コスト(受講後フォローも含め)が非常に高くついてしまったり、研修プログラムが散漫になり本来狙っていた流れから逸脱してしまう恐れをはらむ事も事実です。

絞られたメンバーに対して行われる選抜研修などの場面で、この9つの原則を順守する事は非常に有効ですが、広く底上げを目的とした研修や、将来の登用時に備えた管理職候補人材への研修など、対象者の人数が多い場合や、研修後に「実務で能力発揮する機会が少ない研修」では、9つ全ての原則を順守する事が困難になってきます。

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では、「人の学びを促進するために有効な外圧のかけ方」として、比較的低コストで実現できる優先順位の高い取り組みはどのようなものでしょうか。

弊社で実施している研修プログラムの中で「人の学びを促進するために有効な外圧のかけ方」として効果を上げている事項として、以下の2点があります。

  • 学習者の注意を喚起する/学習者に目標を知らせる
  • フィードバックを与える/学習内容を評価する

上記2点を、例として実際の手法に置き換えると、以下のような内容が挙げられます。

  • 上司(部下)からの事前アンケート
  • 研修前に受講者の上司や部下から受講者には秘密裡でアンケートを収集しておきます。内容は「受講者に今後、期待すること」。やはり周囲からの評価という事に人は興味をひかれ、また、「具体的にこうなってほしい」という1to1の具体的なメッセージに人は行動を喚起されます。
  • 研修受講後の定期テストや定期フィードバック
  • 研修受講後に学んだ事が実践されているかどうか、狙い通りのスキル伸長がなされているかを定期的にフィードバックする事で、研修効果の定着度が促進されます。これは、例えばダイエットで「体重が目に見えて減ると、取り組みの意欲が上昇する」「効果が見えなければ継続する意欲が低下する」事と同様です。
    例えそれが僅かな成長でも、成長の軌跡が"見える化"されると、人の取り組み意欲や継続意欲は高まります。

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以下は一つのデータでしかありませんが、「上司からの事前アンケートを研修の冒頭でフィードバックする事」で、研修終了時に受講者からご記入いただいたアンケートの評点が以下のような結果となったケースが複数出ています。

■アンケート回答(5点満点)

  • 研修参加が決まった時点での期待値・・・2.6点
  • 研修に参加しての満足度・・・4.6点

これは当然、全てが全て「上司アンケートをフィードバックした為」とは言い切れない部分も有りますが、「上司アンケートのフィードバック」を通じて受講者の目つきが変わった風景を実際に目の当たりにしており、また、研修前後で点数差が開いた事から、一つの大きな影響力を持つ要素であったと弊社では捉えており、以降は研修冒頭での「上司アンケートフィードバック」を極力プログラムに盛り込むよう努めています。

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多大なコストを投下して行う教育研修において、研修効果の定着と業績向上への転化を実現していく事は、人材育成業務の中で欠かせない目標の一つです。

上記2点は、それほどの追加コストをかけず、今からでも取り組める事項なので、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか。

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なお、弊社では「人工知能を活用した研修効果の定量評価」に関する取り組みを進めております。
この取り組みを始めた狙いですが、上記に挙げた「②研修受講後の定期フィードバック」については、「それが僅かな成長でも、成長の軌跡が見える化される事が重要」と述べましたが、この一文の中で「僅かな成長でも」というところが非常に大事なポイントとなり、その僅かな差異を人間(上司)の感覚で捉えきるのはとても難しく、その点を人工知能によって精緻かつ定量的に計測していく事が有用と考えているためです。
研修効果の定着度向上にご興味をお持ちの企業様は、ぜひお問合せくださいませ。

株式会社アクティブ アンド カンパニー
ソリューション本部 コンサルティングソリューション事業部
シニアコンサルタント 古澤 祐二

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