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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

『HR Tech』というマジックワード~乗りこなすか翻弄されるか

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先日、東京ビッグサイトで行われたHR系のイベントに弊社ブースを出展させていただきました。ブースにお立ち寄りいただきました皆様、あらためて当日は誠にありがとうございました。

弊社は、こちらのイベントに毎年出展をさせていただいておりますが、今年の会場では「HR Tech」というキーワードを至るところで目にする形となりました。

ご多分に漏れず弊社ブースでも、こちらのキーワードを掲げさせていただきましたが、金融×テクノロジーの『FinTech』が一大ムーブメントを巻き起こす中、次は、人事×テクノロジー『HR Tech』に注目せよ!というメッセージが活発に発信されています。しかし、『HR Tech』というキーワード、活用に乗り出すまで少し注意が必要と考えています。

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この数年、同様に流行したキーワードとして『タレントマネジメント』というキーワードがありますが、一昨年・昨年と「高額なタレントマネジメントシステムを導入したものの、結局お蔵入りしてしまった」という結果を迎えた企業がなんと多かった事か・・・。 『HR Tech』というキーワードにおいても、この時と近い状況に陥るリスクを、人事の現場で業務をする会社としては、少なからず感じています。

では、「HR Tech」を活用していく上で気を付けていくべき点として、どのような事項が挙げられるでしょうか。

それを考えるにあたって、「テクノロジーの活用」という意味で「人事領域(HR)」よりも先行し、効果を上げている「マーケティング領域」を見てみましょう。

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近年「マーケティングの自動化(マーケティングオートメーション)」という言葉が広がるとともに、そのメリットを享受する企業が着実に現れ始めています。

"ユーザーの属性(性別/年齢/住んでいる地域など)に合わせ表示する広告パターンを変える仕組み"、"メルマガ開封・ホームページ閲覧数などのデータを個別の企業ごとに記録・蓄積し、購買意欲を数値化する仕組み"などなど・・・マーケティング領域におけるテクノロジーの活用は非常に盛り上がっております。

様々な手法が産まれる中で、本質的に重要なポイントは「テクノロジーの活用により、大量のデータを蓄積できるようになった」事と「データ(事実)に基づき科学的・論理的な改善策の立案が可能になった」と捉える事ができます。

この事により、これまでマーケティング活動において適切なPDCAを回せず感覚論で活動を続けざるを得なかったり、広告代理店に活動全体のハンドリングをゆだねざるを得なかった企業においても、事実に裏付けされたPDCAサイクルを自社内で着実に回していける環境が整いました。

この「大量のデータを蓄積できるようになった事」、「データ(事実)に基づき科学的・論理的な改善策の立案が可能になった事」は、「人事領域におけるテクノロジー活用」においても、同様に肝となってくると考えられます。

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しかし、ここでもう一つ問題が発生します。よく「システムを入れれば、それだけで自社の状況が」という少し飛躍した捉え方をしている企業もあるようですが、それは違うのです。

確かに、膨大な人事情報を蓄積することやデータを基に科学的客観的に改善箇所の抽出をすることはできるようになったのですが、「システムにどんな情報を蓄積すべきか」、「集まったデータをどのように使って改善点を抽出するか」は、未だ人の手に委ねられており、各社の事業戦略や経営の方向性によって、全く変わってくるものなのです。

システムによっては、蓄積すべきデータの項目が初期設定され、一部データから自動的に計算する仕組みを搭載していることがあるとは思いますが、それが本当に自社に必要十分なデータ項目や分析であるかは、検討する必要があります。不十分であれば自社独自のデータ項目を増やすことや、分析方法を追加で考える必要があります。

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これらの事は必ずしも最新のテクノロジーを使わなければできない事ばかりではありません。実はエクセルのような表計算ソフトを使ってできる部分も多々あります。

一つ言える事は、「エクセルでは何をすればよいか分からない。出来上がったパッケージソフトであれば、あまり考えなくとも答えを手に入れられる状態を作りたい」と考える企業は、データをうまく使うことができずに、「HR Tech」というマジックワードに翻弄される側に回ってしまうかもしれません。

「HR Tech」というキーワードに過敏に反応する前に、エクセルを活用してデータを蓄積してみる、蓄積したデータと睨めっこしてみる、改善策を立案し実行してみる、などなど、いまの環境でもできる事は沢山あり、まずはそこにトライしてみる事も大事です。

弊社でも人事情報をクラウドで管理するサービスを提供しており、クライアントに合わせてどのようなデータを収集し、どう活用すべきかから一緒に考えさせていただいておりますので、御気軽にご相談ください。

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また、時代の流れに乗って、最新テクノロジーを活用した人事領域のサービスとして「人工知能を使った会社説明会診断」というサービスをリリースさせていただきました。このサービスは、会社説明会を通じて学生(応募者)に伝えたい内容と相手への伝わり方を3000件以上のスピーチから抽出したビッグデータと比較参照して解析し、「自社の会社説明は、学生にどれくらい伝わっているのか?伝えたい点を正しく伝えられているか?」という事が定量的に可視化できるサービスです。

採用プロセスにおける歩留りの改善、入社後のミスマッチ防止という観点でも、会社説明会の内容を改善したいとお考えの企業様のお力になれれば幸いです。

コンサルティングソリューション事業部
古澤 祐二

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