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【シーズン3 第6話】性悪説からのシステムとマザルヴェブラハ(mazar be bracha)

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 一般的に海外でビジネスを行うときは、日本人同士のように性善説を前提にしたビジネスは難しいと思いますが、今回はイスラエルとのビジネス取引についてまとめてみたいと思います。

 いつものように己の失敗経験から。

 「自由への逃走とイギリス」でもご紹介したように、私は、世界的な有名な日本のグローバル企業の社員でもなく、日本の権威ある研究機関の学者でもなく、日本政府の役人でもなく、日本のファンドマネジャでもなく、それ以前に友人がイスラエルにいた訳でもなく、はじめてイスラエルとのビジネスを行うときは「人の出会い」しか方法がありませんでした。

 そして、たまたま出会ったパートナーとのビジネスのやり方をいろいろと話し合った結果、ビジネスの取引の段階を3つのステップにすることに合意しました。お互いが3つのステップでコネクトする中で、ロジカルに裏切りにくいシステムを合意した訳です。これはお互いの成功をベクトルにデザインされたものですが、性悪説が前提のシステムです。

 「買収とマイクロサービス方式でのDIY」で解説したように、このシステムは日本への販売契約をしたイスラエル製品のダウンペイメントを回収した後の残りの資金回収ができなかったことがトリガーとなり、最終段階の一歩手前で歯車が狂い破綻してしまいました。

 「次に30代のイスラエルの仕事を行うときは、資本を増強しゼロから仕組みを作り、ある販売会社に2万本の販売契約をしたのですが、資金回収の途中に無理な形で買収されそうになってしまいました。ちょうどその頃はバブル崩壊後で体力もなく、結果的に継続を断念しました(リードインベスターとメインバンクも破綻)。・・・・その他、通信系で1社、開発ツール系で1社の計5社の販売契約を行いソフトウェアを日本語化しました(日本語化はイスラエルでオフショア開発)。そして、別の1社へは日本のベンチャーキャピタルと組んで投資を行い、数年後に無事NASDAQにIPOしました。」

 「トライアングルインベストメント」と名付けた第3ステップのスタートアップへの投資案件は上記のように数年後成功に至りましたが、すでにパートナーと合意した全体の枠組みは壊れ、それぞれが別の道を歩むことになりました。

 その後、私はイスラエルのビジネスから外資系ITベンダーに転身しますが、このとき経験した「性悪説からロジカルに取引システムを作る」という方法は社内外の外人との交渉で非常に役に立ちました。所詮外資系ITベンダーですから交渉も難しいものはなく、私の薄っぺらいイスラエルとのビジネス経験でも通用したのですが、イスラエルには別の次元の契約システムもあります。

 「オープンイノベーションと5つの研究機関」で紹介した「荒野に挑む」に「マザルヴェブラハ(マザル・ウブラハー)」(P17)という言葉が紹介されています。

 「テルアビブ大学が将来、日本のどこかの大学と協力関係を創る必要から、日本テルアビブ大学協会を作る必要ができたとき、どうするか。協会の日本国内における法的地位、イスラエル国内における法的規制など、大変に込み入った議論になって、双方が面倒臭くなって、『マザルヴェブラハ』でいこう、と相成ったのである。この文句は双方が一度唱えるだけで、あらゆる問題が解決する魔法の文句である。この言葉はもともと"幸福と祝福あれかし"というヘブライ語であるが。いわば双方の全面的信頼関係で、一切文書なし、契約書なし。・・・ 言ってみれば、お互いの人格を相互に担保に入れた契約みたいなもので、文書的なものは一切不要になる。」 

 「マザルヴェブラハ」とは、イスラエルのダイヤモンド商が高額なダイヤの取引(イスラエルはダイヤモンドの研磨工場が多い)を最終的にこの言葉で行い、お互いに無限の信頼を持ち合うという意味で、一切の書類や契約書がない契約形態です。「契約」の概念が弁護士による作成された契約書だけではない、というのがいかにもイスラエルらしい...

「マザルヴェブラハ」(mazar be bracha)という言葉がテクニオンでもなく、テルアビブ大学から出てきたことが面白いですね!)

 「契約」と「信頼」はグローバルでビジネスを行う際に常に必要なことですが、特にイスラエルでは次元の違う契約として「マザルヴェブラハ」(mazar be bracha)があることを念頭に入れておくことが肝要ではないでしょうか。

【シーズン1】デジタルのマーケティング
 http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/1/

【シーズン2】マーケティングクラウドとマイクロサービス
 http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/2/

【Coffee Break】
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