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【シーズン3 第4話】オープンイノベーションと5つの研究機関

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 イスラエルのオープンイノベーションには、企業と手を組む他に、大学などの研究機関と連携する方法があります。

  1. テクニオン工科大学
  2. ワイツマン研究所
  3. ヘブライ大学
  4. テルアビブ大学
  5. ベングリオン大学

 これらの研究機関は世界的に有名ですが、研究成果をベースに会社が設立され大学のインキュベーション施設にオフィスがあったり、政府のチーフサイエンティストオフィス(OCS)が支援していたり、民間のベンチャーキャピタルが出資したり、とシードがニードと出会いビジネス化されていることが多くあります。

 オープンイノベーションをどの段階に求めるかによりますが、もっともアーリーステージである論文の段階で評価し、それに投資をする方法や、すでにグローバルにビジネス展開しているものと連携する方法などがあると思います。

 またもやで恐縮ですが、私の失敗経験のご紹介から話を進めてみます。

 前述の5つの研究機関のどことは書きませんが、ある研究室でコンピュータ言語分野の面白いテクノロジーを見つけました。それはCOBOLなどの手続き型の言語をC++などのオブジェクト指向言語に完全コンバートするものでした。当時は2000年問題が世界的にニードが高く、それに対応するためにたくさんのエンジニアを必要としていた時代で、欧米で人手を大量に投入できるインドでのオフショア開発のニードが高まりました。逆にイスラエル人は大量に人手がかかる場合は、人手がかからない方法を創造しようとします。

 面白いテクノロジーなのでプロトタイピングの段階から関わる検討をしてみました。このテクノロジーを開発したのは、ジーニアス(Genius)と評判のコンピュータサイエンスの教授でした。国立の研究所の教授でジーニアスの開発したユニークなテクノロジーなので、信用しやすく魅力に感じると思いますが、どうも私の中で引っかかるものがあり、自分が信頼できるイスラエル人の友人たちに彼のことを尋ねてみました。

 すると、彼の周辺には頭脳を利用したい人がいるようで、研究投資の一部はイタリアのマフィアに流れているかも知れない、という情報を大学時代の彼の同級生からキャッチしました。世界中に散らばるユダヤ人のネットワークは日本人には想像がつかないことがあります。しかし、イスラエルのいいところは狭い国土に800万人(25%はアラブ系)が暮らし、国民皆兵制であるためヒューマンネットワークが密で濃く、バックグランドチェックは信頼できる人脈ネットワークが構築されていれば容易だということです。イタリア云々の真偽のほどは確認することができませんでしたが、結果的にこの研究に手を出すのは辞めました。

 すると、この話が口コミで有名なベンチャーキャピタリストに伝わり、同じようなテクノロジーを開発している会社を紹介してもらいました。すでにイスラエルの大手銀行で採用されているテクノロジーだったのですが、当時の保守的な日本のIT部門の方々には採用されないだろう、と契約をすることもなく終わってしまいました。

 この例にあるように、イスラエルでは人脈ネットワークが非常に重要な役割を果たします。日本の研究者の方々は、そのレベルをすでにご存知でしょうが、前述の5つの研究機関はライフサイエンス、農業、灌漑などの研究が盛んです。

 ちなみに、チーフサイエンティストオフィス(OCS)の果たす役割が日本でも必要ではないか、と強く感じたため、日本のベンチャーキャピタルの研究者をイスラエルにご案内し、その成果は2001年に出版されました。

 ベンチャーマネジメント力の向上―国際比較研究

 「国を挙げてのベンチャー企業支援策が出されているにもかかわらず、目立った成果が無いのはなぜか。ベンチャー企業へのアンケートを分析し、問題点を直視する。さらに、米国、英国、フランス、イスラエルなどの事例から学ぶ。」

 日本ではほとんど知られていませんが、実は日本とイスラエルの5つの研究機関との連携を行う組織が東京にありました。それぞれの名前は「日本テクニオン協会」「日本ワイツマン協会」「日本ヘブライ大学協会」「日本産業人テルアビブ大学協会」「日本ベングリオン大学フレンズ・ジャパン・チャプター」で、1989年に出版された「荒野に挑む」には主にベングリオン大学の研究者たちの研究活動が紹介されています。

 イスラエルの5つの研究機関の日本のパイプ役だった当時の事務局長(ヘブライ語の達人)とは、たまにお会いしてイスラエルの情報交換をしていますが、相変わらず創造性の高いイノベーションが生み出され続けているようです。


【シーズン1】デジタルのマーケティング
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