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【シーズン2 第14話】商品軸のサイロ化とLe Concert

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 「インターナショナル企業とグローバル企業のデジタルマーケティング」で、グローバル企業の本社は機能軸(横糸)を司り、地域軸(縦糸)はレベニューを司る中で、この横糸と縦糸の2軸は「Healthy Conflict」を起こしつつグローバル最適のパフォーマンスを最大化することを、グローバルWebを例にしてまとめましたが、今回はこの2軸に商品軸をプラスした3軸について、グローバルITベンダーを例にして考察してみます。

 最近のグローバルITベンダーは本社の地域軸(縦糸)と機能軸(横糸)と同じようにグローバルに横断しているプロダクトマーケティングの商品軸(3軸め)が強く、地域軸が弱いことが、商品軸、商品群毎のサイロ化(タコツボ化)傾向を強め、皮肉にもユーザーがマーケティングテクノロジー全体を見渡す必要性を高めてしまいました。

 例えば、
外資系IT企業の営業や技術から、「本社に確認しないと答えられない」「他部門なので分からない」という言葉を聞くことが年々多くなっていることを感じる方が多いと思いますが、その理由は、前述の商品軸の傘の中でレポートラインが構成されているため、地域軸として必要なことがあったとしても心理的に「Healthy Conflict」を起こさない、起こしたくない人が増えているからです。

 逆に日本IBMや日本オラクルが創業されたころは、創業者の個性もあり、地域軸が強かったと思います。本社の機能軸やプロダクトマーケティングの商品軸が強すぎても、地域軸が強すぎても弊害があり、やはり
機能軸や商品軸(横糸)と地域軸(縦糸)は必要ならば「Healthy Conflict」を起こすべきであり、それによる対立の解消は、グローバル最適のパフォーマンスの最大化を目指すべきなのでしょう。

 では、マーケティングクラウドで具体的考えてみましょう。
 「マーケティングクラウドは日本版システム工学で簡単に料理できる!」で、デジタルマーケティングは「人の軸」と「物の軸」(商品情報コンテンツ)を融合して捉えることが必須である、として構成要素を分けましたが、Adobe Marketing CloudはB2Cに限定すれば人の軸と物の軸は融合されています。Oracle Marketing CloudとSalesforce Marketing Cloudは人の軸だけで商品が構成されています。ただし、Oracleにはマーケティングクラウドに含まれない物の軸としてCMS(PIM)があり、それをOracle Marketing CloudのEloquaやResponsysと連携すれば、人の軸と物の軸は融合できます。しかし、それらは商品軸として事業部が違うため、それぞれがサイロ化された組織に収まっています。地域軸として縦糸がこれらを串刺しできればユーザーにとり一元化され有益ですが、商品軸の横糸が強いとユーザーにバラバラに提案されることになります。人の軸と物の軸の製品の営業サイクルが同じなら、四半期締日前に同時にCloseされることになりますが、どちらかが長くどちらかが短いと、個別最適を通り越して個人最適が優先される(例え同じマーケティングクラウドであっても)ことになってしまいます(四半期締日の影響が少ない技術者同士は融合しやすいため製品は連携はできるが営業が連携しにくい)。

 逆にSalesforce Marketing Cloudは物の軸の製品を持っていませんから、外部と手を組む必要があります。

 各社のマーケティングクラウドはユーザーにとり中核となる製品がクラウド化された全体を牽引しています。例えば、Adobe Marketing Cloudの中では、Adobe Experience Managerが最も実装に人手がかかりトラブルを誘発しやすいタイプのものですが、中核製品と言われています。Oracle Marketing Cloudですと、EloquaなどのB2BのMA(マーケティングオートメーション)が中核製品でしょう。

 コンチェルト(Concert)とは、ピアノ・バイオリンなどの独奏楽器が中心となり、これにオーケストラが伴う楽曲で協奏曲とも呼ばれていますが、マーケティングクラウドをコンチェルト的に捉えると、Adobe Experience ManagerEloquaが独奏楽器、他のパーツは競演楽器という位置付けでしょうか。指揮者はITベンダーが務めるのか、外注実装企業が務めるのか、あるいは「マーケティングクラウドは日本版システム工学で簡単に料理できる!」のようにユーザー自身が務めるのか、そして独奏楽器は誰が奏でるのか、それにより音色は随分違ってきます

 少し長いですが14分20秒の動画をご覧いただければ、
メラニー・ロランさんの美しさとともに、この人の役割(独奏楽器)の重要性をより具体的にイメージできるのではないでしょうか。

Le Concert highlight(チャイコフスキーバイオリン協奏曲)

※邦題では「オーケストラ」という名前のフランス映画として公開されましたが、フランスの原題は「Le Concert」(コンチェルト)。


● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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